株を始めるとどこかで空売りという言葉を耳にしたことがあるでしょう。
今回は、空売りとは何なのか、またその仕組みはどういうものなのかについてわかりやすく解説したいと思います。
- 空売りとは?
- 空売りのメカニズム
- 空売りをするタイミングは?
- 空売りの株はどこから借りるのか?
- 空売りはどうやったらできるの?
- 空売りの手数料は?コストは?
- ①取引手数料
- ②貸株料
- ③逆日歩
- ④事務管理費
- 空売りのメリット
- 空売りのデメリット
空売りとは?
「空売り」は、信用取引の1つで、株価が下落する局面において利益を得る投資手法です。
端的にいうと、空売りは、証券会社から株式を借りて売り建て、決済期日までに買い戻して株式を返却し、その差額で利益を狙う取引です。
現物取引では、株価が下落する局面に遭遇した場合、下落に耐えるか、含み損の拡大を抑えるために損切りするしか選択肢はありません。
信用取引の空売りを活用すれば、下落という投資環境下においても、利益を得ることができます。
空売りは、通常の株の取引きとは違い、先に売りから始めます。
「持っていないものを先に売るってどうゆうこと?」ですよね。
そこで、先に売るとはどうゆうことなのか、
空売りで儲かる仕組みを例え話でご紹介します。
「A書店」という本屋さんがありました。
A書店は、ベストセラー作品「ハリーポッター」1冊を1000円で仕入れて(買値)、2000円で販売していました。
1000円の儲けです。
普段は、先に仕入れ(買って)店頭に並べて売っています。
ある日、「ハリーポッター」が売り切れてしまいました。仕入れの目処が経っていません。
長らくハリーポッターの品切れ状態が続いているようではお客さんが逃げてしまいます。
焦ったA書店は、「B書店」に電話して、ハリーポッターを借りてきました。
B書店に払う貸出料は、半年で100円です。
次の日、A書店は、借りてきた(買っていない)ハリーポッターを2000円で売りました。
後日、B書店に返すため、ハリーポッターを仕入れよう(買おう)としたところ、
ハリーポッターの仕入れ値は下がっており、500円で仕入れることができました。
そこで、B書店に貸出料100円と一緒に500円で仕入れた(買った)ハリーポッターを返しました。
この時のA書店のハリーポッターによる儲けは、
2000円(売値)-100円(貸出料)-500円(買値)=1400円
となります。
以上が先に売ることと売った後に買って儲けるメカニズムです。
株式も借りてきた株を先に売り後で買うことで儲けを得ることができます。
今度は株を例に空売りを解説します。
証券会社から、株価100円のA商事の株を100株借りてきます。
100円×100株で1万円分の株です。
返却期限は、半年後です。
つまり6ヶ月後には、A商事の株を100株分、証券会社へ返さなければなりません。
※ここで注意していただきたいのが1万円を返すのでも1万円分の株を返すのでもなく、A商事の株の100株分を返せば良いということです。
借りた100株を株価100円のうちにすぐ売り、手元に1万円が入ってきました。
半年後、A商事の株は、1株50円まで下落していました。
100株を証券会社へ返すため、株式市場でA商事の株100株を買いました。
50円×100株=5000円
であることから、最初に手にした1万円のうちの5000円を支払い、100株も手元におきました。
この時点で手元には、A商事の株100株と、5000円が手元にあります。
半年が経ちましたので、貸出料(レンタル料)とともにA商事の100株を証券会社から渡しました。
株の場合の貸出料は、貸株料と呼ばれ、貸し出した株の量に応じて決まります。
お金を借りると利子を払わなければならないのと同じで、株を借りると貸株料という利子を支払う必要が出てきます。
レンタル料のようなものです。
貸株料は、年1%だとします。
(だいたいネット証券だと年1.1%が相場)
1万円の株を借りていますので、貸株料が1%だとすると、
1万×0.01=100円
で年間100円のコストがかかります。
半年で返済しているので、50円の貸株料がかかったことになります。
この時の儲けは、
10000(売値)-50円(貸株料)-5000円(買値)=4950円
となります。
つまり、先売って後で買うという空売りしたことで、4950円の儲けを得たわけです。
空売りのメカニズム
①株を借りる
②借りた株をすぐに売る
③決済の時に借りた株の数だけ買う
④借りた株を返し、賃株料を払う
決済(買い戻す)までのリミットは、基本的に半年で設定されています。
空売りは、
値段が下がれば、利益が出る
値段が上がれば、損失が出る
ということになります。
空売りをするタイミングは?
空売りするタイミングは、相場が下落すると予想させる時です。
皆さんがイメージするいわゆる株式投資は、株を現物で買って売るというものです。
この場合、株を安値で買って高値で売るということになります。
買値よりも売値が高ければ高いほど利益がでるわけです。
つまり、「これから株価が上昇しそう」という予想のもと投資をすることになります。
空売りは、この逆です。
「これから株価が下落しそう」
という予想のもと投資をすることになります。
通常、株の取引きは、先に株を買って、決済する時に株を売ります。
これが空売りだと逆になります。
先に(借りた)株を売って、決済する時に株を買い戻す(そして借りた株を返す)のです。
株式市場は上昇トレンドの銘柄ばかりではありません。
景気後退などは将来的に下落が見込まれる株が発生します。
通常は、上がる銘柄や下がる銘柄の割合は、同じようなものですが、株式市場全体が冷え込んだ時は、下落する銘柄ばかりです。
悪材料が出たときは下げるケースが大概なので、下落を予想する方が簡単かもしれません。
空売りのタイミングは、買いたい株がない(=儲けのチャンスがない)場合です!
この銘柄はこの先もどんどん下げるなと思える銘柄を見つけたときが逆にチャンスなのです!
空売りの出番です!
そのため、売値よりも買値の値段が下がれば下がるほど利益が出ます。
株価が下落すればするほど儲かるのです。
空売りの株はどこから借りるのか?
空売りの株は、証券会社が貸してくれます。
借りている間は、その株の貸料を、証券会社に払います。
また、すべての株の銘柄を空売りすることはできません。
証券取引所が「貸借銘柄」として、指定している株を、空売りすることができます。
空売りはどうやったらできるの?
空売りは、証券会社に信用取引口座を開設することで、できるようになります。
通常の株の口座を作った上で、さらに信用取引口座の開設を申し込む必要があります。
ただし、信用取引口座を開設する際は、試験があり、それに合格すると開設できます。
空売りは、仕組み自体はシンプルなものですが、ルールや決まりごとは、通常の取引に比べ少し複雑になります。
試験があるのは、空売りを含めた信用取引が、通常の株の売買よりも、複雑でリスクが大きくなるためです。
そのため、試験は信用取引のルールやリスクを理解しているかを問う内容となっています。
空売りの手数料は?コストは?
相場が下落局面でもトレードできるというチャンスを得たとしても、コストが必要以上にかかっていたのでは意味がないですよね。
コストが必要以上にかかってしまっていては、空売りで利益を得たとしてもトータルで損してしまうかもしれません。
空売りのコスト面をきちんと把握しておく必要があります。
空売りの手数料は、主に4つあります。
①取引手数料
②貸株料
③逆日歩
④事務管理費
①取引手数料
これは、通常の株の売買同様、株の売り買いの際にかかる手数料です。
取引金額によって金額が異なります。
取引金額が低ければ、0円のときもあります。
信用取引(空売り)をする場合、その他の手数料がかかることから、この取引手数料はタダという証券会社もあります。
最近は取引手数料を無料から数百円以内に収める証券会社が多いですので、この手数料はそこまで重くありません。
②貸株料
先ほどの例でも登場した、株を借りたときのレンタル料です。
お金を借りたときに払う金利と同じ性質の手数料です。
信用買いの場合には、証券会社からお金を借りて、信用取引をしましたので、銀行からお金を借りるのと同様金利がかかりました。
信用売りの際は、証券会社から株を借りて売りを出していますので、貸株料がかかります。
貸株料は、大体年1%程度から3.9%が相場で、制度信用取引、一般信用取引、短期取引等によって異なります。
例えば、100万円(1株10,000円×100株)の株を借りて、信用売り(空売り)をしたとします。
その際、貸株料は1%だとすると、
100万×0.01%=1万
で年間1万円のコストがかかります。
365日で割ると、1日につき27円のコストがかかります。
1か月で833円のコストです。
それなりに見逃せないコストです。
③逆日歩
これは、信用売りの注文が多く入り、証券会社が持っている株が不足してしまった場合に発生する手数料です。
この逆日歩は、必ず発生するコストではありません。
多くの人が空売り(信用売り)をしたいタイミングには空売り(信用売り)の注文が相次いで発生する可能性があります。
そうした事態が生じた場合、証券会社内で株が不足してしまうことから、証券会社がさらに生命保険会社や銀行などの機関投資家から株を借りてきます。
この時、証券会社は機関投資家(生命保険会社や銀行など)に借りているレンタル料を払います。
この時にかかるレンタル料を逆日歩として顧客からも徴収するのです。
例えば、逆日歩(当日品貸料率)が15円、日歩日数が3日だった場合は、
15÷3=5円
1日5円の品貸料がかかります。
15日借りた場合は、5×15=75円の逆日歩が1株につきかかります。
1株100円の株を10,000株、合計100万円の信用売りをした場合、
75×10,000=75万円かかります。
かなりのコストがかかりますね。
この逆日歩は、必ずかかるコストではありません。
逆日歩の情報はHPで開示されていますので、現在どれくらいの逆日歩がかかっているのかに気を配る必要があります。
また信用取引がどれだけなされているのか注意しておかなければなりません。
④事務管理費
信用取引の期間1か月ごとに1株あたり10銭程度の事務管理費が発生します。
例えば、100株の空売りをした場合、10銭×100株から1か月で10円の事務管理費がかかります。
大した額ではありません。
空売りのメリット
空売りの場合、売りから取引をかけることができ、株価が高騰しているときにもチャンスを逃さず取引ができます。
つまり投資の機会が2倍に増えるのです!
上昇局面も下落局面でもトレードができます。
現物取引の買いとの空売りのセットでリスクヘッジすることもできます。
空売りのデメリット
相場の底値や上昇トレンドで空売りをしてしまうと大損をしてしまいます。
下落局面でこのままさらに下がるだろうと踏んで、空売りを仕掛けたら反発し、損失を被ってしまう可能性があります。
これは、通常の株取引(現物買い)のときも同じことが言えます。買ったらすぐに下落して損してしまうのと同じです。
空売りは、現物取引以上にコスト面のリスクもあります。
上記でご紹介したような、
①取引手数料
②貸株料
③逆日歩
④事務管理費
といった手数料がかかります。
コスト面もしっかりと把握した取引をして、せっかく取引したのに差し引きマイナスだったなんてことがないようにしましょう!