企業研究

   

【キャノン】2021年までは売上減少!?2022年からの成長に期待!

 

 

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キャノンが岐路に立たされています。

キャノンは、2019年は、大きな伸びはなかったものの営業利益を増やすことができました。

しかし、現在のビジネス形態で生き残っていことは簡単ではありません。

キャノンの将来は、2020年、2021年にかかっており、今後のキャノンを作る土台となる、とても重要な時期にいます。

そういった意味で今年と来年は、キャノンにとって今後の明暗を分ける大きな分岐点と言えます。

今回は、キャノンの中期経営計画を参考に、キャノンの今後に向けた取り組みについてご紹介していきたいと思います。

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キャノンの2019年の業績を振り返り

営業利益が増益!

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売上は2016年から同程度の推移といえますが、営業利益は少しずつ増益しています。

2018年は減益だったものの、2019年は増益となりました。

増益の要因として、キャノンは「台数やシェアを追いかける従来の考え方から、高付加価値なものを中心に販売する考えに移行したことが挙げられる」としています。

高付加価値を追求した販売の最たるものは、インクジェットプリンターといえます。

これまで、インクトナー等の消耗品で利益を出していましたが、製品本体でも利益を出していく販売方法に転換したことが大きかったといえます。

また、社員一人一人が生産性の高い働き方を推進したことも営業利益を押し上げた要因の一つです。

販管費を抑えることでより効率的な経営を実現しています。

営業利益率は5%を超えており、キャノンは今後さらにこの比率を高めていきたいとしています。

 

IT分野が大きく伸びました!

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キャノンは、成長分野であるITソリューション事業が、全社売上高の3分の1を超えています。

2019年はWindows7のサポート終了に伴うPC関連ビジネスが伸びました。

キャノンの当面の目標であった、ITソリューション売上 2,000億円を達成しました。

2025年には1.5倍の売上3,000億円を目指しているとしています。

 

ITソリューション事業の中核は、下の円グラフで示している濃い青のキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)です。

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出典)中期経営計画|キヤノンマーケティングジャパン株式会社:投資家向け情報

2015年に坂田社長が就任した際、「あらゆるビジネスがITをベースにして動いていく」とコメントしています。

実際、キャノンのBtoBビジネスにおいて、あらゆる領域でソリューション提供が行われているといえます。

キヤノンITSの成長に加え、大手企業向け直販・パートナー向け、キヤノンS&S、医療ITもまだ規模が大きく無いものの、着実に実績を積んでいます。

こうしたことから、キャノンのITソリューション事業は、全体的にバランスがよくなってきています。

キヤノンITSを中心としたエンタープライズ領域は、システム構築などSIサービスが中心であり、案件が大型化してきています。

キャノンが一から作り上げる従来の手法から、なるべくパッケージ化し、顧客にソリューション提案をする方法に変えたことで、収益が増加しています。

例えば、キャノンは、「2012年からスタートした西東京のデータセンターは、稼働開始以来大きな問題もなく、高評価を得ている」と発表しています。

データを預かるだけでなく、保守運用も含めたメニューを拡充することで、顧客のビジネスの一部分をキャノンが担うビジネスになりつつあります。


中堅中小企業向けの中核となるのは、キヤノンS&Sです。特に2019年度はPCの入れ替え案件が多かったのが特徴です。

また、中小企業の領域でも、様々なパッケージの導入や、クラウドサービスの使用等、顧客がITを活用するようになってきました。

キヤノンS&Sは、こうした状況を受け、顧客に提案することに加え、導入後のサポートもアフターケアを行うことでビジネスの幅を広げています。

この領域はIT化が進むため、今後も大きな拡大・収益の向上が見込めます。

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キャノンの従来商品は正念場!

従来商品については市場が縮小していることから、オフィスの複合プリンター以外はシェアNo.1を維持しているものの、このままでは売上・利益が減少していくことが予想されます。

従来の販売方法だけでなく、新たな取り組みが必要です。

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出典)中期経営計画|キヤノンマーケティングジャパン株式会社:投資家向け情報

 

そのひとつとして、レンズ交換式デジタルカメラにおいては、ミラーレスカメラへの移行が進んでいます。

キャノンはEOS R/RPを発売しており、2020年も新製品を予定しています。
レンズを含めたEOS Rシステムを通じ、ミラーレスの分野を推し進めていく戦略です。

インクジェットプリンターについては、売上台数を追求するだけでなく、機能についてもしっかり追求することで最も売りたい中核商品を顧客に提供できるようにしていく狙いです。

また、大容量インクモデルのラインアップをさらに増やし、高付加価値モデルの構成比を上げていく計画です。

オフィスの複合プリンターについては、特に大手企業においてペーパーレス化が進んでいます。

 

プリントボリュームが前年を上回る状況が続いてはいるものの、大手企業向けについては、減少してくることが予想されます。

中堅中小企業においても、今までのような増加は見込めなくなるでしょう。

キャノンは、こうした状況を受け、「ソリューションも含めた提案をすることで、MFPの拡販に努める」「プリントボリュームが減少するため、単価の下落をしっかりコントロールしていきたい。」としています。

 

レーザープリンターも、ペーパーレス化の影響を大きく受けるものの、業界によっては活用が見込める分野もあり、数年前から特定業種向けの拡大を図っています。

この拡販は成果が出ており、今後さらに進めていく計画です。

従来のプリンターのような単なる出力を行う商品だけでなく、例えばPOP印刷のようなビジネスにつながる出力を販売していく狙いです。

 

医療分野の成長に期待!

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キャノンは、2020年1月1日に、キヤノンライフケアソリューションズを、キヤノンメディカルシステムズに移管しました。

一方、キヤノンITSメディカルは、引き続きキャノングループにとどめています。

昨年2019年は電子カルテを中心とした病院情報システムの構築等で、メディカル分野は業績が好調でした。

メディカル分野は、地域医療がしっかり進んでおらず、日本の医療分野におけるIT化は、まだまだ発展途上であり、遅れている部分があります。

キヤノンITSの技術力も生かしながら、医療のIT化を進めることで、この分野を伸ばしていくとしています。

 

2020年以降の経営計画!

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キャノンが掲げている目指すべき姿は、「高収益企業グループ」です。

成長戦略については、ITソリューション事業をさらに伸ばす戦略です。

収益力強化については、主要事業で稼ぎ続けることと社内の生産性向上を掲げています。

社内の業務システム刷新のために、設備投資を行う予定です。

生産性向上のために、キャノンが力を入れていくとしています。

キャノングループも中長期的には人員減が見込まれ、日本全体についても、今後労働人口が減少していくことが予想されます。

そのなかで、生産性をどう上げていくのかが課題です。

業務プロセスの見直しやITの活用、働き方改革などを率先して行うとしています。

2022年に向けて2021年までは我慢の年!

2020年はキャノンライフケアソリューションズの移管のほか、2019年のWindows7サポート終了に伴うPC関連の反動による伸びの減が想定されており、減収の計画としています。

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出典)中期経営計画|キヤノンマーケティングジャパン株式会社:投資家向け情報

 

キャノンにとって2020年と2021年は我慢の年であり、2022年には売上はもちろん、営業利益が伴った成長をししていくことともに、営業利益率もさらに上げていくことを見込んでいます。

そのため、2020年と2021年は消費者事業は2022年に向け売上・営業利益ともに減少すると見ています。

 

引き続きIT分野に注力!

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大手企業と中小企業では事情は異なるものの、顧客の要望の中で多いものとしては、労働力不足です。

キャノンの顧客のうち、大手企業からは、IT活用を通じた業務効率の上げ方や、本業・コアビジネスへの集中、働き方改革の推進について求める声が大きいようです。

一方、中堅中小企業からは、人手不足や高齢化に関する解決提案を要望されることが多いようです。

顧客の中には、導入後のシステムの維持管理が自社内でできないため、サポートを求める声もあります。

こうしたニーズに応えるため、人手をかけずに業務を進めていくことができる、ITが重要になってきます。

IT需要が旺盛な状況は、今後も数年間続くと見ており、キャノンにとってもビジネスチャンスです。

 

国内のIT市場の見通しは、データ量が非常に増えており、データセンターの需要が増加していくことが予想されます。

データセキュリティや、ITそのものを所有したくない、というユーザー向けのクラウドは、非常に大きな成長が見込まれており、この分野に対して力を注いでいくとしています。

中小企業向けITの市場はそれほど大きな伸びは見込まないものの、高齢化や人員不足等からキャノンがビジネスを拡大させていくべき領域といえます。

 

キャノンは、 ITソリューション事業において、2025年に売上高3,000 億円以上を掲げ、その中間年である2022年には2,500億円規模にしていくとしています。

 

従来商品も強化していく構え

レンズ交換式デジタルカメラは、2020年においてミラーレスカメラ・レンズのラインアッ プを増強するとしています。

オフィスの複合プリンターについては、業界の3番手となっており、市場シェア拡大に向け取り組みを強化していく構えです。

また、IoTを活用した保守サービスの効率化を引き続き行っていくとしています。

レーザープリンターには、遠隔監視機能を搭載することで、顧客の使用状況を的確に把握し、市場より高品質なサービスを提供するよう努めています。

昨年2019年から今年にかけた取り組みとしては、基幹システムの刷新、RPAの導入、サービス性を上げるためのIoTのさらなる活用、量販店のECとバッティングしないような形でのEC活用を通じ販売効率を向上させていくことを掲げています。

 今年の夏頃に西東京データセンターのII期棟が完成が予定されています。需要も見込まれ、すでに予約もかなりあるようです。

また、社内基幹システムの刷新も予定しており、設備投資を予定しています。

 

企業提携やM&Aも模索!

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キャノンは、様々な企業との提携や、M&Aを通じ、その領域の増強や規模拡大を図ることを今後推進していく計画であり、新しいプロフェショナル人材の獲得を模索しています。

前述でご紹介しましたが、キャノングループの医療機器メーカーである、キャノンメディカルシステムズは2018年7月2日、がん遺伝子検査事業に参入すると発表しました。

同事業のスタートアップ企業であるアクトメッド(東京・新宿)の株式の66.6%を取得したのです。

遺伝子検査とキヤノンメディカルの医療機器による検査と遺伝子検査を組み合わせることで、がん患者らに適切な薬や治療法を提供するとしています。


キヤノンメディカルシステムズはCTなどの画像診断機器が主力です。

アクトメッドついてご説明しますと、2017年の設立で、遺伝子解析の受託サービスを提供している会社です。

アジア人に固有の病変をはじめとする臨床情報のデータベースを持ち、アジア人向けの遺伝子解析に強みがあります。

このアクトメッドには、キヤノンメディカルのほか、台湾のアクトゲノミクス社が33.4%出資しています。

キヤノンメディカルは、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)といった画像診断機器を主力としています

アクトメッドの販売網を使い、遺伝子検査サービスの顧客を増やしていく狙いです。

がん分野では患者の遺伝子を調べ、効果が期待される人だけに薬を投与する「がんゲノム医療」が注目されています。

将来的には、キヤノンメディカルの診断機器と組み合わせ、こうした分野の取り組みも増やしていく戦略です。

 

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