皆さんは、伊藤忠商事と聞いて何を思い浮べるでしょうか。三大商社の一角を担う存在、高給取りのイメージ、世界を股にかけて活躍している企業等様々なイメージをお持ちの方がいらっしゃるかと思います。
今回は、投資対象として伊藤忠商事はどれほど魅力的なのかご紹介していきたいと思います。
- 伊藤忠商事の株価状況
- 伊藤忠商事の財務状況
- 伊藤忠商事の株価推移
- 伊藤忠商事の事業内容
- 伊藤忠商事の組織図
- 事業セグメント
- 当期利益の推移
- 伊藤忠商事の配当金の推移
- 配当性向の引き上げと自社株買いの方針!
- まとめ
伊藤忠商事の株価状況
株価(3/22 15:00)
2,019.0
年初来高値
2,695.5 (2020/02/06)
年初来安値
1,911.0(2020/03/17)
最高値(過去10年)
2,695.5 (2020/02/06)
最安値(過去10年)
666.0(2011/3/15)
PER(会社予想):6.04倍
PBR(会社予想):0.98倍
配当金:85円
配当利回り:4.11%
配当権利確定日:3月末、9月末
自己資本比率:29.1%
ROE:17.86%
ROA:5.34%
EPS:334.8円
伊藤忠商事の財務状況
ROE:17.86%
ROEは、10~20%程度であれば優良企業であると判断されます。
自己資本利益率(ROE:Return on Equity)とは、自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の指標です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標です。
株主の立場から見ると、自己資本利益率が高い会社は「自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社」であると見ることができます。
※ROE(自己資本利益率)の目安
伊藤忠商事は、株主から集めたお金と事業活動から得たお金をどれだけ有効活用しているか示すROEが17%あります。
この数字はかなり高いと言えます。
三菱商事のROEは10.7%、三井物産ROE10.1%であり十分に高水準ですが、伊藤忠商事のROE17.86%であり同業他社も圧倒しています。
超優良企業の証と言えます。
ROA:5.35%
ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ROA(総資産利益率:Return On Assets)とは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の収益性の指標です。
純資産(自己資本)、負債(他人資本)を含めた、すべての資本をいかに効率的に運用できているかを表す情報とも言えます。
一般的に、ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ただし、業種によって基準が変わってくるため、ROAを分析する際は同業種の水準と比較することが大切です。
伊藤忠商事を含めた三大商社は、残りの三菱商事と三井物産なわけですが、
三菱商事はROA3.6%、三井物産はROA3.5%なので、伊藤忠商事のROA5.35%は同業他社を圧倒しています。
驚異的な数値を叩き出しているわけです。
EPS:334.8円
EPS:Earnings Per Share(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、1株に対して当期純利益がいくらあるのかを表す指標です。
「1株利益」「1株あたり当期純利益」と呼ばれることもあります。
EPSとは、成長性を見る指標です。EPSの推移を見るようにしましょう。
順調にEPSが増えていれば、成長性のある企業であると言えます。
EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。
順調にEPSが増えている企業は、安定的に収益をあげ、しかも成長中の企業なので、投資先として検討しましょう。
伊藤忠商事のEPSの推移
以下は、伊藤忠商事のEPSの推移を表したグラフです。
順調に上昇していますので、優良企業といえます。
また、EPSは、他社と1株当たり利益を比較することで、会社規模の影響を除外した収益性の分析も可能です。
そのため、株式投資で銘柄の比較を行う際にも用いられます。
三菱商事と三井物産のEPSの推移をそれぞれ見ていきましょう。まずは三菱商事です。
次に三井物産です。
2016年の世界同時株安の際、同業他社である三菱商事と三井物産は、赤字転落となりEPSがマイナスとなってしまったのに対し、伊藤忠はEPSを減らしただけでプラスをキープし続けていました。
さらに、近年のEPSでは、伊藤忠商事と三菱商事が良い勝負を繰り広げています。
後ほどご紹介しますが、伊藤忠商事は、大規模な自社株買い予定しています。そのため、EPSが急激に上昇することが予想されます。
恐らく2020年度中にはEPSで総合商社トップになるでしょう。
PER:6.04倍
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)とは、財務分析で企業の成長性を分析するときに利用する指標の一つであり、株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表すものです。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高だと判断できます。
PERは会社の利益を基準に判断し、PBRは会社の資産を基準に判断されます。
PER15倍以下なら割安と言われていますので、現在の伊藤忠商事の株価は、かなり割安だといえます。
PERは、6.04倍です。総合商社はもともと低いPERであり、どの社も10倍を割っていますが、伊藤忠商事は、同じ総合商社である三菱商事や三井物産よりもPERが低い値です。
今が狙い目だと言えます。
PBR:0.98倍
PBR:Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表す指標です。
PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。
PBRの目安は1倍です。
一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。
PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。
PER同様、PBRも伊藤忠商事は、同じ総合商社である三菱商事や三井物産より低い値です。
今が狙い目だと言えます。
株価指標の読み方については、以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。
伊藤忠商事の株価推移
10年チャート
今回の新型コロナウィルスの影響で株価が一気に500円以上下げ、一時2000円を割る大幅下落となりました。
しかし、その後は、若干持ち直し、現在では2,019円まで戻しています。
今の株値が下がっているときに買いを入れることができていれば、かなり美味しいでしょう。
伊藤忠商事は、財務状況も良く、総合商社の中でも優良銘柄であることから、今回のように株価が下がれば空かさず買いを入れたい銘柄です。
2016年の世界同時株安の際、同業他社である三菱商事や三井物産が大きく株価を下げたのに対し伊藤忠はそこまで下落していません。
1年チャート
伊藤忠商事の事業内容
伊藤忠商事株式会社は、1858年初代伊藤忠兵衛が麻布の行商で創業したことがはじまりとのことです。
現在は、世界63ヶ国に約110の拠点を持つ大手総合商社として、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において国内、輸出入及び三国間取引を行うほか、国内外における事業投資など、幅広いビジネスを展開しています。
総合商社というと、資源や貿易といったイメージが強いかと思います。
総合商社というと消費者にとっては馴染みがあまりなく、遠いところでビジネスをしているという印象があるかもしれません。
実は、伊藤忠商事のビジネスは、誰もがよく知っているブランドや店舗、商品などの消費者から近い生活消費関連ビジネスの割合が非常に大きいのが特徴です。
以下が伊藤忠グループが手がける主な非資源ブランドです。ファミリーマートやスカパーなど誰もが聞いたことがある会社がたくさんありますよね。
伊藤忠商事は、当期純利益に占める資源以外(非資源)の割合が非常に大きく、なかでもその半分以上を占める生活消費関連分野は業界No.1の収益規模を誇ります。
資源ビジネスの収益の割合が比較的大きい他商社との大きな違いとなっています。
この生活消費関連分野では、総合商社の中でもNo.1です。
伊藤忠商事の組織図
会長以下の組織図を伊藤忠商事HPを参考に作成しましたので掲載します。
それぞれの分野ごとにカンパニーをおく組織体制をとっています。
事業セグメント
伊藤忠商事は、事業カンパニーを繊維カンパニー、機械カンパニー、金属カンパニー、エネルギー・化学品カンパニー、食料カンパニー、住生活カンパニー、情報・金属カンパニー、第8カンパニーの8つに分類しています。
事業カンパニー別の連結純利益と基礎収益、総資産、実質営業キャッシュ・フローおよびROAの構成比は下図のとおりとなっています。
食料カンパニーや金属カンパニーの割合が比較的大きく、
この2つが伊藤忠商事の主力であると言えます。
各カンパニーの事業分野は、以下の通りとなっています。
〇繊維カンパニー
ブランドビジネス、素材服飾資材・アパレル、繊維資材
当カンパニーは「ファッションアパレル部門」「ブランドマーケティング第一部門」「ブランドマーケティング第二部門」の3部門から構成され、原料から最終製品、ファッションから非繊維に至るさまざまな分野で事業を展開し、国内商社の中でNo.1の取扱高を誇っています。
〇機械カンパニー
プラント・電力(水・環境、インフラ、再生可能エネルギー、石油化学、IPP)
船舶・航空(新造船・中古船仲介、船舶保有、民間航空機、航空機リース)
自動車(乗用車・商用車の国内外販売、事業投資)
建設機械・産業機械・医療機器(国内外販売、事業投資)
当カンパニーは、「プラント・船舶・航空機部門」「自動車・建機・産機部門」の2部門で構成されています。
電力・石油化学・橋梁・鉄道等のインフラプロジェクト、航空機・船舶・自動車・建設機械・産業機械等の機械関連ビジネス、そして医療ビジネス分野に至る幅広い領域で事業を展開しております。
また、水・環境関連事業、再生可能エネルギー事業等、新たな収益基盤の創出、強化にも積極的に取組んでいます。
〇金属カンパニー
金属・鉱物資源開発(鉄鉱石、石炭、非鉄金属等)
原料・燃料・製品トレード(鉄鉱石、石炭、アルミ、ウラン、非鉄製品等)、リサイクルビジネス(鉄スクラップ)
鉄鋼関連ビジネス(鉄鋼製品の輸出入、販売、加工)
当カンパニーは「金属資源部門」及び「鉄鋼製品事業室」を含む直轄組織で構成されています。
金属資源部門は鉄鋼・電力等、社会インフラの基礎産業を原料・燃料の面から支える部門であり、世界各地で鉄鉱石・石炭・ウラン・ベースメタル・レアメタルの鉱山開発とそのトレードを行っている他、アルミを中心とした非鉄金属原料の開発事業及びトレードビジネス、金属原料・製品の取引、リサイクルビジネス等を展開しています。
また当カンパニー傘下の鉄鋼製品事業室において伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社が手掛ける鉄鋼製品ビジネスというフィールドにおいて、シナジーの追求や各種サポートを行っています。
これら金属カンパニーの活動は、資源・エネルギー、また金属原料・製品の安定供給を通じて、世界経済の発展に貢献しています。
〇エネルギー・化学品カンパニー
エネルギー開発・トレード(原油、石油製品、LPG、LNG、天然ガス、電力等)
化学品事業・トレード(石化基礎製品全般、硫黄、肥料、医薬品、合成樹脂、生活関連雑貨、精密化学品、蓄電池、電子材料等)
当カンパニーは「エネルギー部門」「化学品部門」の2部門で構成されています。
「エネルギー部門」は、原油・石油製品・LPG・LNG・天然ガス、電力、水素等、エネルギー関連商品全般のトレード、関連プロジェクトの推進及び石油・ガスプロジェクトの探鉱・開発・生産業務の推進を行う部門です。
「化学品部門」は、有機化学品、無機化学品、医薬品、合成樹脂、精密化学品、電子材料、蓄電池等のトレード及び事業を行う部門です。
グローバルな事業展開を行う両部門でシナジーを発揮し、石油・ガス・化学分野における最適なバリューチェーンを創出し、日本及び世界の人々の豊かな暮らしに貢献します。
〇食料カンパニー
原料・素材
製造加工(生鮮、食糧)
中間流通(総合食品卸)
小売(CVS)
当カンパニーは「食糧部門」「生鮮食品部門」「食品流通部門」の3部門から構成され、顧客ニーズを起点に、食料資源の開発から原料供給、製造加工、中間流通、リーテイルまでを有機的に結びつけた付加価値の高いバリューチェーンの構築を日本、中国・アジアを中心に世界規模で推進し、食の安全・安心に対する管理機能の高度化を図りながら、世界の食料業界のリーディングカンパニーを目指しています
〇住生活カンパニー
紙・バルブ・衛材(製造、卸)
天然ゴム・タイヤ(加工、卸、小売)
木材・建材(製造、卸)
不動産(住宅・物流施設等)開発・運営
物流(3PL、国際輸入等)
当カンパニーは、「生活資材・物流部門」、「建設・不動産部門」の2部門から構成されています。紙パルプ、天然ゴム・タイヤ、並びに3PL、国際輸送等の物流事業を取り扱う生活資材・物流部門と、木材・住宅資材を取り扱う建設建材事業、住宅・物流施設等の不動産開発事業、不動産運用・建物管理運営事業を取り扱う建設・不動産部門それぞれの持つ総合力とグローバルネットワークで社会に新たな価値を提供し、豊かな住生活の実現に貢献しています。
〇情報・金属カンパニー
情報(ICT、BPO、ヘルスケア)
通信(モバイル、メディア、通信・衛星)
金融(リテール、法人)
保険(流通、引受)
当カンパニーは「情報・通信部門」と「金融・保険部門」の2部門で構成されており、ICTやBPO等のサービス分野を核としたビジネスシナジー創出を目指しております。 近年注目されている情報と金融が融合した「フィンテック」ビジネス等において、情報・通信部門のビジネス開発機能と金融・保険部門が持つ顧客網とノウハウを組み合わせることで、新たな市場の取込と拡大をリードしていきます。
〇第8カンパニー
既存の7カンパニーと協働し、特に生活消費分野に強みを持つ当社の様々なビジネス基盤を最大限活用しながら、異業種融合・カンパニー横断の取り組みを加速させ、市場や消費者ニーズに対応した「マーケットインの発想」による新たなビジネスの創出・客先開拓を行っております。
当期利益の推移
伊藤忠商事は、2011年度に「生活消費分野」で業界No.1、2014年度には「非資源No.1商社」を達成し、2015年度に初めて連結純利益で総合商社No.1となりました。
その後も着実に収益力を強化、2018年度の連結純利益は 5,005 億円となり、2017年度の4,003 億円から一気に5,000 億円のステージに到達しました。
2014年:3,006億円
2015年:2,404億円
2016年:3,522億円
2017年:4,003億円
2018年:5,005億円
2019年:5,000億円
2020年(予想):5,200億円
三菱商事と三井物産の当期純利益の推移をそれぞれ見ていきましょう。まずは三菱商事です。
次に三井物産の当期純利益の推移を見ていきましょう。
2016年の世界同時株安の際、同業他社である三菱商事と三井物産は、赤字となり当期純利益がマイナスとなってしまったのに対し、伊藤忠は当期純利益を減らしただけでプラスをキープし続けていました。
伊藤忠商事の配当金の推移
伊藤忠商事の配当金は、増配し続けています。
直近では、1株あたり85~88円となっています。
2008年:18.5円
2010年:15円
2010年:18円
2011年:44円
2012年:40円
2013年:46円
2014年:46円
2015年:50円
2016年:55円
2017年:70円
2018年:83 円
2019年:85円
2020年:85~88 円(予想)
増配トレンドを続けています。今年度は過去最高の配当を達成する予定です。
伊藤忠商事の配当権利確定日は「3月末と9月末」です。
直近の配当権利確定日は、3月27日です。
つまり、口座に配当金が入金されるのは、権利確定日から6ヶ月後の「6月末と12月末」となります。
伊藤忠商事は、今後配当性向を上昇していく計画です。
配当性向の引き上げと自社株買いの方針!
伊藤忠商事のは、中長期的な株主還元方針に沿って、機動的、継続的に実行することを掲げています。
配当性向の段階的引き上げを計画し、将来的に配当性向30%を目指すべく、段階的な引き上げを実施しているとのことです。
2019年度の1株当たり配当金は、85円を下限としています。2020年度の累積配当とし、配当額、配当性向の更なる引き上げを目指す計画です。
さらに、一億株程度を目途として、自社株買いをキャッシュフローの状況等に鑑み継続的に実施するとしてます。
以下に自社株買いの取得状況についてご紹介します。
自社株買いの取得状況(2020年3月2日現在)
取得し得る株式の総数:40,000,000株(発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合約2.7%)
取得し得る株式の総数:700億円を上限とする
取得期間:2019年6月12日~2020年6月11日
2020年2月29日までに取得した自己株式の累計
取得した株式の総数:0株
取得した株式の総額:0円
まとめ
伊藤忠商事の特徴は、総合商社の中でも業績が良く高収益を誇っていは点です。
1株益(EPS)は、同業他社と比較しても最高水準であり、上昇を続けています。
銘柄の割安度を示すPERも三菱商事や三井物産と比べても割安です。
自社株買いと中長期的な配当性向の引き上げを計画しており、株主還元も積極的な超優良銘柄だと言えます。
日本屈指の優良企業でもあることから、買いを入れたい銘柄のひとつです。
総合商社の中で、個人的に最も買いたいと思う銘柄は、伊藤忠商事です。