株式投資を考えている初心者の方の中には、株主になったら商品券や食品、割引券など株主優待を受けたいと望む方がいらっしゃることと思います。
しかし、株主優待の商品や割引券として魅力的であれば、なんでも手を出していいわけではありません。
今日は、株主優待銘柄に投資する際に、考慮すべき5つのポイントを解説します。
- 株主優待は少額投資家向き!
- 株主優待で知っておくべきポイント
- ①最少投資金額で多数銘柄に投資する
- ②優待券は使いやすいものから選ぶ
- ③配当利回りも視野に総合的に有利なものを選ぶ
- ④権利取り直前に株価が大きく上昇する銘柄は避ける
- ⑤株価が急落し業績不振な銘柄は避ける
株主優待は少額投資家向き!
そもそも株主優待の制度は、個人投資家を優遇することを目的としています。
株主優待制度は、個人投資家にとってメリットが大きい制度だと言えます。
それは小口で投資する個人投資家を優遇し、大口で投資する機関投資家には少々不利な内容だからです。
買い物をするとき、たくさん買うほど、割引券が付与され、メリットを受けやすくなるのが一般的な感覚です。
しかし、株主優待はその逆なのです。
普段の買い物の感覚で連想してしまうと、株主優待制度も同様に、株をたくさん保有している大株主に恩恵があると勘違いしてしまいます。
実はその逆で、株主優待制度は、株を保有数が少ない小口の個人投資家を優遇する内容となっています。
そのため、株をたくさん持っているような大口の機関投資家の中には株主優待制度に反対しているところもあるのです。
では、どのように小口で投資する個人投資家を優遇し、大口で投資する機関投資家には少々不利な内容となっているのか具体例を使ってご説明していきます。
以下は、典型的な株主優待の一例です。
上記の優待内容から、100株当たりでどれだけ分の金額の優待を受けられるかを計算したのが、以下の表です。
上記の表から分かるとおり、100株当たりで得られる株主優待の価値は、株を購入する上での最小単位である、100株を保有する株主が1,000円相当で最大となるわけです。
一方、保有株数が大きい株主は、100株当たりで得られる株主優待の金額が小さくなります。
上の例で言うと、100,000株持っていると、100株あたり3円相当の株主優待しかもらうことができません。
こうしたことから、株主優待制度は、小額投資をするような個人株主を優遇する内容となっており、どの企業もそうした傾向にあります。
個人株主数を増やしたい上場企業は、優待制度を積極的に活用して個人株主にアピールをし、なるべく自社の株を保有してもらえるよう工夫しているのです。
例えば、小売・外食・食品・サービス産業では、特にその傾向が鮮明に現れています。
こうしたジャンルの産業は、個人株主がそのまま自分たちの会社の製品やサービスの購入者になることもあることから、広報宣伝活動の一環として自社製品を優待品に積極活用する企業が多数あります。
個人投資家で少額投資すればするほど恩恵があるわけです。
ただし、優待投資も株式投資である以上、優待内容だけしか見ず、株価や業績まったく見ないで投資するのは問題です。
ここからは、株主優待を有効利用するために知っておくべきポイントをご紹介していきます。
株主優待で知っておくべきポイント
優待投資で得をするために、優待投資の魅力とリスクについて、知っておくべきポイントを5つご紹介します。
①最少投資金額で多数の銘柄に投資する
②優待券は使いやすいものから選ぶ
③配当利回りも視野に総合的に有利なものを選ぶ
④権利取り直前に株価が大きく上昇する銘柄は避ける
⑤株価が急落し業績不振な銘柄は避ける
①最少投資金額で多数銘柄に投資する
投資した金額あたりで最も得をする購入株数で保有するのがポイントです。
効率的に優待を獲得するには、最少投資金額で多数の銘柄に分散投資するのが有利なわけです。
株主優待制度は小口投資家を優遇する内容となっているわけですから、効率よく且ついろいろな優待を取得するためには、最小売買単位である、100株あたりで多数の銘柄に分散投資するのが有利でしょう。
②優待券は使いやすいものから選ぶ
株主優待は、使う見込みがあるものを選びましょう。
せっかく株主優待をもらっても使わなかったらもったいないです。優待券の中には、有効期限(通常は1年)がついているものもあります。
期限切れしないように注意が必要です。
こうした面から、食品の詰め合わせ等の自社の商品を贈ってくる優待は無駄にするリスクが低いと言えます。
割引券等の有効期間1年の株主優待券を贈ってくる場合は、期限切れにつながりやすいと言えます。
人気の優待券に、外食業の「食事券」があります。
ガスト等のファミリーレストランを運営しているすかいらーくが代表的な銘柄です。
すかいらーくホールディングスの株主優待
権利確定月:6月、12月
【権利付最終日】
次回:2020/06/26
前回:2019/12/26
【優待内容】
飲食代割引カード
(12月のみ)
3,000円相当 :100株以上
11,000円相当 :300株以上
18,000円相当 :500株以上
36,000円相当 :1,000株以上
(6月のみ)
3,000円相当 :100株以上
9,000円相当 :300株以上
15,000円相当 :500株以上
33,000円相当 :1,000株以上
有効期限(通常は1年)があるのが普通ですから、使わずに失効してしまえば、メリットを得られません。
ただし、人気の株主優待券なら、ネット上、あるいはチケットショップで売却できる場合もありますが、かなり割引されしまうので注意が必要です。
500円の食事券が400円で売れれば良い方でしょう。
500円の食事券が300円、あるいは、250円でしか売れないこともざらにあります。
優待券によっても売却価格が異なります。
あまり人気のない優待券だと、買い取ってすらもらえないチケットショップもあります。
株主優待の中でも、たとえば1回の買い物が1割引になるようなものは、売ることができないものが多く、その場合は、自分で使う以外にメリットを得られません。
売却する際に有利なのが、航空会社(JALやANA)の株主優待割引券です。
ANAの株主優待の内容
【権利確定月】
3月、9月
【権利付最終日】
次回:2020/03/27
前回:2019/09/26
【優待内容】
➀株主優待番号ご案内書
1枚(以下100株ごとに1枚増) :100株以上
4枚(以下200株ごとに1枚増) :400株以上
7枚(以下400株ごとに1枚増) :1,000株以上
254枚(以下800株ごとに1枚増) :100,000株以上
※国内営業路線を片道1区間株主優待割引運賃で利用可
※混雑状況により販売座席数に制限有
➁自社グループ優待券1冊
100株以上 ※1冊に以下(1)〜(6)の優待券
(1)IHG・ANA・ホテルズグループジャパン(「インターコンチネンタル」・「ANAクラウンプラザホテル」・「ホリデイ・イン」・「ホリデイ・イン リゾート」):宿泊(ベストフレキシブル料金の室料のみ20%割引)6枚、
レストラン飲食(10%割引)5枚、婚礼飲食(10%割引)1枚、会議・一般宴会(15%割引)3枚
※一部適用除外ホテル有
(2)国内ツアー(「ANAスカイホリデー」等)および海外ツアー(「ANAワンダーアース」・「ANAハローツアー」等)7%割引券・5%割引券各3枚
(3)ゴルフ場(「武蔵の杜カントリークラブ」)ゴルフプレー料金割引券4枚
(4)ゴルフ場(「早来カントリー倶楽部」)ゴルフプレー料金割引券3枚
(5)空港売店(「ANA FESTA」他)10%割引券5枚
(6)株主限定通販商品の優待価格販売
【有効期間・発行時期】
3月株主:6月〜11月末(5月末発行)
9月株主:12月〜翌年5月末(11月末発行)
航空会社の株主優待割引券は、おすすめの株主優待の一つです。
仮に自分で使わない場合でも、ネットオークションなどで売却できます。
今は禁止されていますが、フリマアプリで航空会社の株主優待割引券を売っている人もいました。
ただし、ネットオークション等で売却する場合でも、売却金額は自分で使う場合に得られるメリット額より小さくなることがほとんどです。
さらに航空優待券の売却価格は、その時々の需給によって価格が変動します。
優待券が株主に贈られるときに売却価格は下がり、旅行需要が増えるときに上がる傾向があります。
ネットで「株主優待券 売却」と検索すれば、ネットオークションの売値や、チケットショップが出している売値を見ることができます。
チケットショップに直接行って、売り値や買い値を問い合わせてみるのも手です。
使うあてがないと分かったら、なるべく早めに売却するのがコツです。
人気の株主優待割引券でも、有効期限までの期間が短いと、売れないことがあります。
逆に有効期限までの期間が長いと高く売れるわけです。
③配当利回りも視野に総合的に有利なものを選ぶ
日本の個人投資家かわよく言われていることのひとつに、配当金よりも贈り物(株主優待)を好む傾向があるという点です。
株式の制度上、株主への利益還元は、本来は配当金支払いによって行うのが一般的です。
つまり、何が言いたいかといいますと、配当金と株主優待を総合して、メリットの大きいところを選ぶべきなのです。
株主優待ばかりに目がいき、1,000円の自社商品(食べ物)を贈ってくれる会社と、同じ投資金額で、3,000円の配当金(源泉税差し引き後では3,000×0.8=2,400円)を払ってくれる会社を見て、前者を取るようなことは避けましょう。
④権利取り直前に株価が大きく上昇する銘柄は避ける
魅力的な株主優待で有名な銘柄には、優待の権利取り直前に株価が急騰し、権利落ち後に株価が急落するものがそこそこあります。
優待の権利取り前に、株価が急騰している銘柄は、いくら株主優待が魅力的でも投資を避けた方が良いと思います。
株主優待で得られる利益金額よりも権利落ち後の株価の下落の方が上回り、トータルで損をしてしまうことがあります。
小型で人気の優待株は特に、権利取りの直前に株価が大きく上昇し、権利取りの直後に株価が大きく下がる傾向にあります。
そういう銘柄は、投資を避けた方が賢明です。特に年1回だけ人気の優待を出す小型株では、権利取り前に株価が大きく上がり、権利取りの直後に株価が大きく下がる可能性があります。
年2回(中間決算と本決算)に分けて優待を出す銘柄は、そういった極端な値動きは少ないです。
⑤株価が急落し業績不振な銘柄は避ける
株価が下落基調でお得な株主優待をもらえそうだということで、業績不振である企業にもかかわらず、株式を保有してしまうケースがあります。
こうした不合理なことは避けましょう。
株主優待で得られる利益金額よりも、経営の不祥事や業績不振による株価の下落の方が上回り、トータルで大きな損をしてしまうことがあります。
着実な成長が見込めて株が上昇していきそうな株主優待銘柄を選びましょう。