半導体に使われるシリコンの世界シェアNo.1を誇る信越化学工業。
信越化学工業は、インフラ整備の必需品となっている塩化ビニル樹脂、デジタル製品の基本素材である半導体シリコンは、他を圧倒する支持を得て、世界トップシェアを誇ります。
これらは私たちの生活を豊かにするものであり、社会の「基盤」となっています。
今後も自動運転車やAIロボット、5G等の夢のある生活を創出する半導体産業の発展に欠かせない材料であることから、将来性も高く評価することができます。
そのため、財務状況、業績、収益率も高水準です。
今回は、そんな超優良企業である、信越化学工業についてご紹介していきます。
- 信越化学工業の株価状況
- 信越化学工業の財務状況
- 信越化学工業の株価推移
- 信越化学工業の事業内容
- 信越化学工業の当期利益の推移
- 信越化学工業の配当金の推移
- 信越化学工業の配当性向は下落基調
- 信越化学工業の今後
- まとめ
信越化学工業の株価状況
株価
11,700.0(4/28 15:00)
年初来高値
13,945.0(2020/2/21)
年初来安値
8,751.0(2020/3/17)
最高値(過去10年)
13,945.0(2020/2/21)
最安値(過去10年)
3,395.0(2011/3/11)
PER:16.39
PBR:2.0倍
配当金(会社予想):220円
配当利回り:1.88%
配当性向(予想):29.1%
配当権利確定日:3月末、9月末
自己資本比率:82.8%
ROE:12.8%
ROA:10.2%
EPS:725.9円
信越化学工業の財務状況
自己資本比率:82.8%
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
自己資本比率は、自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)で算出します。
自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、倒産するリスクが高まります。
一方で自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。
自己資本比率は会社経営の安定性を表す数値であり、高いほどよいのです。
では自己資本比率がどのくらいなら倒産しない会社といえるでしょうか。
一般に自己資本比率が70%以上なら理想企業ならまずつぶれません。
40%以上なら倒産しにくい企業といえます。
信越化学は、自己資本比率82.8%であり、潰れるリスク極めて低い優良企業といえます。
自己資本比率が80%を超える企業はなかなかありません。
ROE:12.8%
ROEは、10~20%程度であれば優良企業であると判断されます。
自己資本利益率(ROE:Return on Equity)とは、自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の指標です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標です。
株主の立場から見ると、自己資本利益率が高い会社は「自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社」であると見ることができます。
信越化学は、株主から集めたお金と事業活動から得たお金をどれだけ有効活用しているか示すROEが12.8%となっています。
信越化学は、ROEが10%を超えており、高い収益率を誇っています。
ROA:10.2%
ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ROA(総資産利益率:Return On Assets)とは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の収益性の指標です。
純資産(自己資本)、負債(他人資本)を含めた、すべての資本をいかに効率的に運用できているかを表す情報とも言えます。
一般的に、ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ただし、業種によって基準が変わってくるため、ROAを分析する際は同業種の水準と比較することが大切です。
信越化学はROAが10.2%です。
優良企業の目安である5%を大きく上回っていることから、高い収益率を持つ優良企業だと言えます。
EPS:725.9円
EPS:Earnings Per Share(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、1株に対して当期純利益がいくらあるのかを表す指標です。
「1株利益」「1株あたり当期純利益」と呼ばれることもあります。
EPSとは、成長性を見る指標です。EPSの推移を見るようにしましょう。
順調にEPSが増えていれば、成長性のある企業であると言えます。
EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。
順調にEPSが増えている企業は、安定的に収益をあげ、しかも成長中の企業なので、投資先として検討しましょう。
以下は過去10年の信越化学のEPSの推移を表したグラフです。
2011年:204.4円
2012年:237.0円
2013年:249.0円
2014年:267.3円
2015年:302.1円
2016年:366.1円
2017年:412.8円
2018年:624.2円
2019年:725.9円
2020年:755.2円
ずっと上昇傾向にありますね。2016年からわずか3年でEPSは2倍以上になりました。
EPSが順調に上昇しており、その伸びも凄まじいことから、超優良企業といえます。
また、EPSは、他社と1株当たり利益を比較することで、会社規模の影響を除外した収益性の分析も可能です。
信越化学は、同業他社と比べても際立ってEPSが大きく上昇しています。
財務状況や収益性、業績から見ると、化学メーカーでは信越化学が頭一つ出ている気がします。
ただし、2020年の業績はどうなるか分かりません。
現時点の会社予想では、2019年を上回る水準になるとのことですが、新型コロナウィルスの影響で2019年の数値より悪化するかもしれません。
PER:16.39倍
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)とは、財務分析で企業の成長性を分析するときに利用する指標の一つであり、株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表すものです。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高だと判断できます。
PERは会社の利益を基準に判断し、PBRは会社の資産を基準に判断されます。
PER15倍以下なら割安と言われていますので、現在の信越化学の株価は、割安でも割高でもない標準値だといえます。
信越化学のPERは、16.39倍です。
この企業の収益率や業績を考えたら割安かもしれません。
PBR:2.0倍
PBR:Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表す指標です。
PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。
PBRの目安は1倍以下です。
一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。
PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。
PBRは、2倍となっており、1倍以上あることから割高だといえます。
株価指標の読み方については、以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。
信越化学工業の株価推移
10年チャート
出所)信越化学工業(株)【4063】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス
1年チャート
出所)信越化学工業(株)【4063】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス
上昇トレンドが続いています。
新型コロナウィルスの影響で株価が一時4,000円以上下げましたが、3月中旬から反発して上昇基調となっています。
信越化学工業の事業内容
信越化学は、6つの事業分野を中心に、産業や生活の基礎になる素材、製品を作っている化学メーカーです。
信越化学の製品群は、基本となる生産技術を応用したモノづくりなどを通じて、原料や市場など、相互に緊密なつながりをもちながら、多彩な分野で活躍、経済情勢に左右されにくい強固な事業構造を築いています。
信越化学の製品は、建築・住宅、化粧品、トイレタリー、パソコン、スマートフォンや、自動車にいたるまで、私たちの暮らしの身近なところで活躍しています。塩ビ、半導体シリコンをはじめ、世界でトップシェアを誇る製品も数多く、あらゆる製品分野で“世界ナンバー1”を目指しています。
信越化学工業の当期利益の推移
2018年に当期純利益2,500億円をつけてから、その期を境に下落トレンドとなっています。
2019年は、前年の半分という大幅減益となりました。
2020年は新型コロナウィルスの影響でさらに利益が減少することが予想されます。
2011年:1,001億円
2012年:1,006億円
2013年:1,057億円
2014年:1,136億円
2015年:1,286億円
2016年:1,488億円
2017年:1,759億円
2018年:2,662億円
2019年:3,091億円
2020年(予想):3,140億円
信越化学の当期純利益は、年々増加しています。
2016年と比べ2019年は当期純利益が2倍に上昇しています。
つまり、当期純利益が3年間で2倍になったわけです。
2019年4~12月期の連結決算では、信越化学工業を除く化学大手5社が最終減益となる中、信越化学工業だけは、最終増益となりました。
景気後退局面でも利益を出し続ける信越化学恐るべしです。
半導体材料シリコンウエハーで契約に基づく値上げの効果が出たとのことです。
シリコーン樹脂や電子材料など競争力の高い製品が景気減速の影響を抑えているといえます。
業績は、かなり好調であるといえます。
信越化学工業の配当金の推移
信越化学は、10年以上前からずっと減配なしです。
ここ3、4年で毎年のように増配を続けています。
2011年:100円
2012年:100円
2013年:100円
2014年:100円
2015年:100円
2016年:110円
2017年:120円
2018年:140円
2019年:200円
2020年:220円(予想)
2018年と2019年で配当金は大きく伸びました。
今年は前年からさらに増配する予定です。
業績が好調であるが故ですね。
過去最高の配当金220を予想しています。
信越化学の配当権利確定日は「3月末と9月末」です。
つまり、口座に配当金が入金されるのは、権利確定日から6ヶ月後の「6月末と12月末」となります。
信越化学工業の配当性向は下落基調
配当性向は、1株当たりの利益のうちどれだけの割合を配当金に当てたかを示す指標です。
配当性向は、以下の数式で求められます。
当期純利益÷配当金総額
EPS(1株当たり純利益)÷1株当たり配当金
信越化学は、当期純利益の27%を配当金として株主に分配する予定ということです。
2011年:42.4%
2012年:42.2%
2013年:40.2%
2014年:37.4%
2015年:33.1%
2016年:30.1%
2017年:27.9%
2018年:20.0%
2019年:24.2%
2020年:29.1%(予想)
配当性向はここ数年まで下落してきていました。
増配をしてきたにもかかわらず、配当性向が下落していた理由は、増配以上に当期純利益が大幅に増加したからです。
しかし、ここ数年は配当性向が上昇傾向になってきています。
大幅な増配をした影響です。
それでも配当性向は、27%程度と30%を下回っているため、健全な経営をしていると言えるでしょう。
配当性向とは、企業が1年で稼いだお金のうちどれだけの割合を配当金に当てているか示した値です。
一般的に配当性向30%程度の企業が多いため、一般的な数値といえるでしょう。
信越化学工業の今後
信越化学工業は、「5G」向けの半導体に使う高機能のウエハーを開発しました。
ウエハーとは、半導体材料を薄く円盤状に加工してできた薄い板のことです。
窒化ガリウム(GaN)を使う製法で、従来製法よりも大型化しやすいことが特徴です。 大型化することのメリットは、基板を量産し普及しやすくなることです。 量産化できれば、販売コストを下げることができるのです。
5G対応の基地局や電子部品への採用を目指すとしています。
5Gは現行の4Gに比べて通信速度が100倍になります。
日本では今春から商用化される予定です。
5Gの電子機器で使う半導体は高周波の電波を使って膨大な情報を処理します。
現在のシリコン製の基板ではこうした電波に対応しきれず、画像の乱れや通信障害などにつながる可能性も指摘されています。
調査会社の富士キメラ総研(東京・中央)によれば、5Gの世界市場について、基地局だけで2023年に19年見通し比38倍の4兆円超に拡大する可能性があるとのことです。
信越化学は、次世代通信規格「5G」向けに特化した材料を相次ぎ発売しています。
2019年末から今年初めにかけて、高周波の電波に対応するプリント基板や半導体の新材料を発表しました。
汎用の電子機器や半導体の材料で需要の停滞が懸念されるなか、市場の成長期待が大きい5G機器の需要を取り込んでいます。
信越化学工業のさらなる躍進に期待です。
まとめ
信越化学の当期純利益は、年々増加しています。
当期純利益が2019年までの3年間で2倍になりました。
2019年4~12月期の連結決算では、信越化学工業を除く化学大手5社が最終減益となる中、信越化学工業だけは、最終増益となりました。
信越化学工業一強ですね。
景気後退局面でも利益を出し続けるのが信越化学工業です。
シリコーン樹脂や電子材料など競争力の高い製品が景気減速の影響を抑えているといえます。
また、次世代通信規格「5G」向けに特化した材料を相次ぎ発売しています。
AIにも欠かせない半導体等の電子材料で世界トップシェアを誇る信越化学。
財務状況や業績、収益率どれをとっても高い値です。
配当金もここ数年は毎年増配をしています。
新型コロナウィルスの影響で株価が下がってる今が買い時かもしれません。
信越化学が世界で高いシェアを誇るシリコンは、今後も自動運転技術やAIロボット、5G等の最先端技術を支える半導体産業の発展に欠かせない材料であることから、将来性も高く評価することができます。