国内線、国際線ともに2位のJAL。
2010年に公的資金投入とリストラで更生法適用、2012年から再上場を果たしました。
航空運輸業は、新型コロナウィルスの影響で大打撃となっています。
JALは、コスト削減のため、大規模減便に踏み切りました。
ただし、国際線と国内線が同時に需要を失うという前例のない窮地に打開策はなく、忍耐の経営を迫られています。
航空運輸銘柄の魅力は、なんといっても航空券が割引となる株主優待券です。
JALは、配当利回りも良く、なんと5%を超えています。
株価は大きく下がり、かなり株価は割安水準となっています。
今回は、そんな超有名企業かつ高配当銘柄であるJALについてご紹介していきます。
JALの株価状況
株価(4/28 15:00)
1,911.0
年初来高値
3,487.0 (2020/1/10)
年初来安値
1,656.5 (2020/4/6)
最高値(過去10年)
4,940.0 (2015/8/4)
最安値(過去10年)
1,605.0 (2012/9/26)
PER:12.4倍
PBR:0.55倍
配当金:55円
配当利回り:5.70%
配当性向(会社予想):33.7%
配当権利確定日:3月末、9月末
自己資本比率:60.9%
ROE:13.6%
ROA:7.4%
EPS:274.2円
JALの財務状況
自己資本比率:60.9%
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
自己資本比率は、自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)で算出します。
自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、倒産するリスクが高まります。
一方で自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。
自己資本比率は会社経営の安定性を表す数値であり、高いほどよいのです。
では自己資本比率がどのくらいなら倒産しない会社といえるでしょうか。
一般に自己資本比率が70%以上なら理想企業ならまずつぶれません。
40%以上なら倒産しにくい企業といえます。
JALの自己資本比率は、60.9%であり、健全経営をしており倒産のリスクは低めです。
ROE:13.6%
ROEは、10~20%程度であれば優良企業であると判断されます。
自己資本利益率(ROE:Return on Equity)とは、自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の指標です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標です。
株主の立場から見ると、自己資本利益率が高い会社は「自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社」であると見ることができます。
JALは、株主から集めたお金と事業活動から得たお金をどれだけ有効活用しているか示すROEが13.6%となっています。
ROEが10%以上なので、自己資本利益率は高めです。
ちなみに同業他社である、ANAは10.6%なので、JALの方が収益性が高いといえます。
ROA:7.4%
ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ROA(総資産利益率:Return On Assets)とは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の収益性の指標です。
純資産(自己資本)、負債(他人資本)を含めた、すべての資本をいかに効率的に運用できているかを表す情報とも言えます。
一般的に、ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ただし、業種によって基準が変わってくるため、ROAを分析する際は同業種の水準と比較することが大切です。
JALのROAが7.4%であり、総資産利益率も高水準であり、収益性が高い企業だと言えます。
ANAのROAは、4.1%であることから、JALが純資産利益率も大きく上回っています。
EPS:274.2円
EPS:Earnings Per Share(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、1株に対して当期純利益がいくらあるのかを表す指標です。
「1株利益」「1株あたり当期純利益」と呼ばれることもあります。
EPSとは、成長性を見る指標です。EPSの推移を見るようにしましょう。
順調にEPSが増えていれば、成長性のある企業であると言えます。
EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。
順調にEPSが増えている企業は、安定的に収益をあげ、しかも成長中の企業なので、投資先として検討しましょう。
以下はJALのEPSの推移を表したグラフです。
2016年:481.3円
2017年:464.4円
2018年:385.6円
2019年:432.1円
2020年:274.2円
EPSは、2019年まで横ばい状態でしたが、コロナウィルスの影響で2020年は下落の見込みです。
PER:12.4倍
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)とは、財務分析で企業の成長性を分析するときに利用する指標の一つであり、株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表すものです。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高だと判断できます。
PERは会社の利益を基準に判断し、PBRは会社の資産を基準に判断されます。
PER15倍以下なら割安と言われていますので、現在のJALのPERは12.4倍で割安の状態です。
PBR:0.55倍
PBR:Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表す指標です。
PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。
PBRの目安は1倍以下です。
一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。
PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。
PBRは、0.65倍となっており、1倍を下回っていることから、割安だといえます。
株価指標の読み方については、以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。
JALの株価推移
10年チャート
出所)日本航空(株)【9201】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス
1年チャート
出所)日本航空(株)【9201】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス
新型コロナウィルスの影響で株価は、一時1,000円下げ、2,000円台を割りました。
この値は、2013年以来の安値です。
現在、1,900円付近で推移してます。
7年前の最安値圏と同じ株価水準となっており、かなりお買い得な水準となっています。
JALの事業内容
航空運送事業は、全体の85%を占めており、国内線と国際線の割合が半分ずつとなっています。
パッケージ旅行やクレジットカード事業等のその他の事業が全体の14%を占めています。
JALの当期利益の推移
2014年に最高益である、当期純利益3,006億円を突破しましたが、その後は横ばい状態となり、2020年は減益見込みとなっています。
2012年:1,866億円
2013年:1,716億円
2014年:1,662億円
2015年:1,490億円
2016年:1,744億円
2017年:1,641億円
2018年:1,354億円
2019年:1,508億円
2020年(予想):530億円
2012年から業績は横ばいかやや下落基調となっています。
2014年に当期純利益が1,800億円を突破しましたが、それ以降は1,700億円台を行ったりきたりとなっています。
2020年は、新型コロナウィルスの影響で大幅な減益を見込んでいます。
JALの配当金の推移
JALは、2013年から2017年まで減配傾向でしたが、ここ3年減配することなく配当金を維持してきました。
2013年:190円
2014年:160円
2015年:104円
2016年:120円
2017年:94円
2018年:110円
2019年:110円
2020年:55円
今年の配当金は、昨年の一株あたり110円から減配となり、55円となりました。
期末配当が無配となりました。
新型コロナの影響で大幅減益が見込まれる影響です。
ちなみにANAもJAL同様、期末配当金の見送りを発表しました。
JALの配当権利確定日は「6月末と12月末」です。
つまり、口座に配当金が入金されるのは、権利確定日から6ヶ月後の「12月末と6月末」となります。
JALの配当性向の推移
配当性向は、1株当たりの利益のうちどれだけの割合を配当金に当てたかを示す指標です。
配当性向は、以下の数式で求められます。
当期純利益÷配当金総額
EPS(1株当たり純利益)÷1株当たり配当金
JALは、当期純利益の33.7%を配当金として株主に分配する予定ということです。
2013年:18.86%
2014年:19.48%
2015年:19.46%
2016年:21.61%
2017年:26.5%
2018年:38.25%
2019年:26.11%
2020年:33.7%
ここ数年の配当性向は、20%から40%と標準的な値で推移してきています。
2020年は配当性向が33.7%を予定していますが、コロナウィルスの影響で配当性向はかなり上昇する模様です。
配当性向とは、企業が1年で稼いだお金のうちどれだけの割合を配当金に当てているか示した値です。
まだ配当の余裕はある状態ですが、業績次第では配当性向が50%以上となり、配当過多となる可能性があります。
JALの株主優待
JALの魅力は、なんと言っても株主優待特典です。
JALの株主優待は、所有株数に応じて、発行される割引券の枚数は変わります。
国内線全定期航空路線について、1名分の片道1区間、50%割引の優待券が貰えます。
さらに、6ヶ月毎に割引券が貰えます。
・毎年3月31日、9月30日現在の株主様に対し、当社グルー プの国内線の株主割引券を発行
・3年(7基準日)連続で同一株主番号でご所有の株主に対し、 追加で株主割引券を発行
・海外・国内JALグループツアー割引券(7%割引)を配布
発行基準
※1 5枚+1,000株超過分500株ごとに1枚
※2 203枚+100,000株超過分 1,000株ごとに1枚
保有株数と保有期間別の株主優待
必要株数 | 優待内容 |
---|---|
100株以上 | 【3年未満保有株主】 ■1枚(3月のみ) |
200株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:1枚、9月:1枚 |
300株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:2枚、9月:1枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:3枚、9月:2枚 |
|
400株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:2枚、9月:2枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:3枚、9月:3枚 |
|
500株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:3枚、9月:2枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:4枚、9月:3枚 |
|
600株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:3枚、9月:3枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:4枚、9月:4枚 |
|
700株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:4枚、9月:3枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:5枚、9月:4枚 |
|
800株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:4枚、9月:4枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:5枚、9月:5枚 |
|
900株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:5枚、9月:4枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:6枚、9月:5枚 |
|
1,000株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:5枚、9月:5枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:7枚、9月:7枚 |
|
100,000株以上 | 【3年未満保有株主】 ■3月:203枚、9月:203枚 |
【3年以上保有株主】 ■3月:206枚、9月:206枚 |
※1,000株超過分は500株ごとに1枚(年間 2枚)を贈呈する。
※100,000株超過分は1,000株 ごとに1枚(年間 2枚)を贈呈する。
必要株数 | 優待内容 |
---|---|
100株以上 | ■国内:2枚、海外:2枚(3月のみ) |
200株以上 | ■国内:2枚(年間 4枚)、海外:2枚(年間 4枚) |
※JALパックツアー商品を正規料金から7%割引
JALの今後の見通し
ここからは、主にJALの新型コロナウィルスの影響についてご紹介していきます。
日本航空(JAL)は4月17日、4月末までの国内線4071便を追加で減便すると発表しました。
この時点で期間中の減便率は60%となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大で、4月の予約数は前年同月比で8割減っています。
93路線が対象で、期間中完全に運休となるのは、羽田―宮古、成田―伊丹など9路線です。
さらに、4月28日、新型コロナウイルスの感染拡大で、5月1日~17日までの国内線6468便を追加で減便すると発表しました。
羽田―新千歳など最大99路線が対象で、期間中の減便率は7割弱に上りました。
新型コロナの感染防止対策として、国内線で6月30日まで3列席の中央の座席は販売しないことも決めています。
搭乗客同士で一定の距離を確保する狙いです。
また、同日発表したJALグループの3月の輸送実績は国際線が前年同月比73.8%減の20万7320人、国内線が同57.1%減の131万8751人でした。
いずれも10年の経営破綻後で最少の数字です。
2020年1~3月期の連結最終損益が233億円の赤字だと発表しています。
これは、従来予想比400億円の下方修正です。
前年同期は442億円の黒字で、四半期の最終赤字は12年の再上場後初めてです。
4月以降も減便が広がっており、当面は厳しい経営環境が続きそうです。
そこで、日本航空(JAL)は、メガバンクなど主要な取引先銀行に対し、3000億円規模の融資を要請しました。
新型コロナウイルスの感染拡大で大幅な減便が続いており、この先半年程度に必要な運転資金を確保する狙いです。
さらに、旅客減の長期化に備え、政府系金融機関を含めて6000億円規模の調達を検討しています。
航空業界は、コスト削減のため、大規模減便に踏み切っています。
ただ、国際線と国内線が同時に需要を失うという前例のない窮地に打開策はなく、忍耐の経営を迫られています。
まとめ
JALの当期純利益は、2020年から大幅な減少を見込んでおり、再上場以来最悪と数値となる予定です。
今後の世界情勢によってはさらなる減益が見込まれます。
現在は、減配しない予定ですが、このまま減益が続くと今の配当金を維持するのが難しくなってくるでしょう。
配当利回りは、5%超と高配当であり、価格も割安です。
さらに、航空券の50%割引という魅力的な株主優待が安値で手に入るチャンスが到来しています。
しかし、当面は減益が見込まれるため、今すぐ買いとは言えない状況です。
しばらく様子見ですが、高配当、高収益、割安圏の超優良銘柄であることは間違いないため、今後の動向に注目です。