住友化学系の含窒素化合物メーカー広栄化学工業。
医農薬中間体、電子材料関連などファイン化合物を得意としています。
広栄化学工業は、新型コロナウィルスの抗ウィルス薬で最も注目されている銘柄のひとつです。
広栄化学工業は、なんと「アビガン」「レムデシビル」の原材料で国内唯一の製造メーカーです。
今回は、今大注目のトレンド銘柄、広栄化学工業についてご紹介していきます。
- 広栄化学工業の株価状況
- 広栄化学工業の財務状況
- 広栄化学工業の株価推移
- 広栄化学工業の事業内容
- バラエティに富んだ製品群
- 100年蓄積された技術力
- 広栄化学工業の当期利益の推移
- 広栄化学工業の配当金の推移
- 広栄化学工業の配当性向は30.5%
- ワクチン原材料の国内唯一の製造メーカー!
- まとめ
広栄化学工業の株価状況
株価(5/8 15:00)
4,445
年初来高値
4,445(2020/5/8)
年初来安値
1,394.0(2020/3/23)
最高値(過去10年)
4,445(2020/5/8)
最安値(過去10年)
915.0(2011/3/15)
PER:22.63倍
PBR:1.08倍
配当金(会社予想):70円
配当利回り:1.35%
配当性向(会社予想):30.5%
配当権利付き最終日:2020年9月28日
自己資本比率:68.8%
利益剰余金:155億円
ROE:4.9%
ROA:3.3%
EPS:265.8円
広栄化学工業の財務状況
自己資本比率:68.8%
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
自己資本比率は、自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)で算出します。
自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、倒産するリスクが高まります。
一方で自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。
自己資本比率は会社経営の安定性を表す数値であり、高いほどよいのです。
では自己資本比率がどのくらいなら倒産しない会社といえるでしょうか。
一般に自己資本比率が70%以上なら理想企業ならまずつぶれません。
40%以上なら倒産しにくい企業といえます。
広栄化学工業の自己資本比率は、68.8%でまずつぶれない企業といえます。
現に広栄化学工業は100年以上の歴史を誇ります。
ROE:4.9%
ROEは、10~20%程度であれば優良企業であると判断されます。
自己資本利益率(ROE:Return on Equity)とは、自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の指標です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標です。
株主の立場から見ると、自己資本利益率が高い会社は「自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社」であると見ることができます。
広栄化学工業は、株主から集めたお金と事業活動から得たお金をどれだけ有効活用しているか示すROEが4.9%となっています。
収益性はもう一歩です。
ROA:3.3%
ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ROA(総資産利益率:Return On Assets)とは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の収益性の指標です。
純資産(自己資本)、負債(他人資本)を含めた、すべての資本をいかに効率的に運用できているかを表す情報とも言えます。
一般的に、ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ただし、業種によって基準が変わってくるため、ROAを分析する際は同業種の水準と比較することが大切です。
広栄化学工業のROAが3.3%であり、総資産利益率も高水準はもう一踏ん張りです。
EPS:265.8円
EPS:Earnings Per Share(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、1株に対して当期純利益がいくらあるのかを表す指標です。
「1株利益」「1株あたり当期純利益」と呼ばれることもあります。
EPSとは、成長性を見る指標です。EPSの推移を見るようにしましょう。
順調にEPSが増えていれば、成長性のある企業であると言えます。
EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。
順調にEPSが増えている企業は、安定的に収益をあげ、しかも成長中の企業なので、投資先として検討しましょう。
以下は広栄化学工業のEPSの推移を表したグラフです。
2014年:14.5円
2015年:67.3円
2016年:88.9円
2017年:232.1円
2018年:1,112.5円
2019年:196.5円
2020年(予想):265.8円
EPSは、上昇傾向にあり、2018年に大きく増加しています。
アビガンとレムデシビルの生産拡大により、2020年は予想を上回る増加が期待できます。
PER:22.63倍
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)とは、財務分析で企業の成長性を分析するときに利用する指標の一つであり、株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表すものです。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高だと判断できます。
PERは会社の利益を基準に判断し、PBRは会社の資産を基準に判断されます。
PER15倍以下なら割安と言われています。
現在の広栄化学工業のPERは22.63倍で割高状態です。
PBR:1.08倍
PBR:Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表す指標です。
PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。
PBRの目安は1倍以下です。
一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。
PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。
PBRは、1.08倍となっており割安圏までもう少しです。
株価指標の読み方については、以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。
広栄化学工業の株価推移
10年チャート
出所)広栄化学工業(株)【4367】:株式/株価 - Yahoo!ファイナンス
1年チャート
出所)広栄化学工業(株)【4367】:株式/株価 - Yahoo!ファイナンス
新型コロナウィルスの影響により株価は、1,000円以上下落しました。
ところが、コロナウィルスにアビガンやレムデシビルの有効性が示され、政府が公式に承認を決めたことにより、広栄化学工業の株価は、5月8日の1日で1,215円も上昇しました。
現在、4,445円となっています。
広栄化学工業の事業内容
広栄化学工業が、医療業界向けに酢酸の製造を始めたのが1917年。
それから100年。研究開発型企業として蓄積された技術をもとに、
さまざまなライフシーンに役立つ含窒素化合物を提供し続けています。バラエティに富んだ製品群
ピリジン類やピラジン類、100種類を超えるアミン化合物など種々の含窒素化合物を提供。効率的な切り替え生産で、多様な製品に対応します。また、豊富な含窒素化合物をカチオン源とするイオン液体のラインナップも取りそろえています。
100年蓄積された技術力
独創的で先駆的な研究開発は、化学業界において常に高い評価を得ています。化合物のみの指定でもプロセス開発できる合成力、極低温・禁水・禁酸素条件をはじめ難易度が高い有機合成が工業レベルで実施可能です。
受託合成も対応可能
マルチ設備、高圧水添設備、気相反応設備など多彩な生産設備を駆使して製造可能なプロセスを構築し、工業品として供給いたします。当社工場はGMP対応も可能な高い信頼性を有するほか、ISO9001/14001も取得。厳格な品質保証体制のもと生産・出荷いたします。
売上高、営業利益ともにファイン製品部門が大部分を占めています。出所)広栄化学工業株式会社
広栄化学工業の当期利益の推移
当期純利益は、上昇傾向にあり、2018年に最高益である、54億円を突破しました。
2012年:1.5億円
2013年:-2.4億円
2014年:0.7億円
2015年:3.29億円
2016年:4.35億円
2017年:11.3億円
2018年:54.43億円
2019年:9.6億円
2020年(予想):13億円
アビガンとレムデシビルの生産拡大により、2020年は予想を上回る純利益の増加が期待できます。
広栄化学工業の配当金の推移
広栄化学工業の配当金は、増配傾向にあります。
2014年:15円
2015年:35円
2016年:40円
2017年:50円
2018年:70円
2019年:60円
2020年:70円(予想)
今年の配当金は、昨年から10円増し、一株あたり70円の予想しています。
ただし、アビガンやレムデシビルの生産が拡大すれば、さらなる増配も期待できます。
減配の可能性は低いでしょう。
広栄化学工業の配当権利付き最終日は「2020年9月28日」です。
広栄化学工業の配当性向は30.5%
配当性向は、1株当たりの利益のうちどれだけの割合を配当金に当てたかを示す指標です。
配当性向は、以下の数式で求められます。
当期純利益÷配当金総額
EPS(1株当たり純利益)÷1株当たり配当金
広栄化学工業は、当期純利益の30.2%を配当金として株主に分配する予定ということです。
2014年:103.6%
2015年:52%
2016年:44.9%
2017年:21.5%
2018年:7.59%
2019年:6.29%
2020年:30.5%
5年前の配当性向は100%超の時期もあり、高い配当性向であったことから、やや配当過多でした。
ところが、ここ数年は配当性向が低く抑えられており、健全な経営をしているといえます。
ワクチン原材料の国内唯一の製造メーカー!
広栄化学工業は、レムデシビル原材料のピロールの国内唯一の製造メーカーです。
広栄化学工業は、新型コロナウイルスの治療薬として期待される「アビガン」および「レムデシビル」の原料を生産しています。
千葉工場(千葉県袖ヶ浦市)の既存プラントを生かし、5月中にアビガンの合成原料であるピリジンの生産体制を構築しています。
レムデシビルの原料であるピロールは、3月から海外の受託製造メーカー向けに生産を開始していました。
最近、米ギリアド・サイエンシズとの直接取引も決定し、生産量を拡大する計画です。
アビガンの合成原料であるピリジンについては、政府によるアビガンの国産化要請に応じるかたちで生産を拡大する計画です、
5月中にも、農薬原料や各種溶媒向けにピリジンを製造していた千葉工場の気相反応プラントでアビガン向け原料の稼働を開始する予定です。
同社では多様なピリジン塩基類を生産しており、全体の生産能力は年1万トンです。
このうちアビガン向けの生産規模は現状では未定ですが、政府の目指す年内200万人分の備蓄目標に貢献していく方針です。
アビガンについて
2020年3月28日、安倍首相は新型コロナによる肺炎に対して「アビガンの治療効果が出ている」として、薬事承認を目指し、必要な治験プロセスを開始すると表明しました。
アビガンは、世界の多くの国から関心が寄せられており、量産も開始する意向。
また、ドイツ政府が大量調達すると報じられ、購入規模は数百万人分とされています。
富士フイルムホールディングスは2020年3月31日に「アビガン」の国内臨床第3相試験を開始したと発表しました。
2020年4月9日には米国で臨床第2相試験を開始すると発表しました。
安倍晋三首相は5月4日夕の自民党役員会で、抗インフルエンザ薬「アビガン」が新型コロナウイルスの治療薬として5月中に薬事承認されるとの見通しを示した。出席者が明らかにした。
アビガンの承認は当初7月以降になる予定だった。首相が厚生労働省に手続きを急ぐよう指示した。アビガンの備蓄はコロナ患者用に70万人分ある。政府は2020年度に現在の3倍にあたる200万人分に増やす方針だ。
レムデシビルについて
米ギリアドがエボラ出血熱の治療薬として開発し、MERSやSARSでも効果が認められました。
同じコロナウイルスで、中国と米国で臨床試験が開始され、日本を含む1000人規模の国際共同臨床試験も始まっています。
安倍首相は4月27日、新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「レムデシビル」について「間もなく薬事承認が可能となる見込み」と明らかにしました。
海外での承認などを条件に審査の手続きを簡略化する「特例承認」を適用し、5月7日に承認されました。
厚生労働省は5月7日、抗ウイルス薬「レムデシビル」を新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認した。米製薬大手ギリアド・サイエンシズが開発した薬で、国内で初の新型コロナ治療薬となる。審査期間を短くする特例で承認し、原則、重症患者に投与する。
薬事・食品衛生審議会(厚労相の諮問機関)の部会で了承された。ウイルスの増殖を抑える働きがあり、人工呼吸器などが必要な重症患者に静脈注射で投与する。
加藤勝信厚労相は7日、「必要としている患者に速やかに届くようギリアドと相談したい」と話した。ただ「いつ日本に届くのか確定した情報はない」とし、「必要な量の確保に向けて努力したい」と述べた。
厚労省は医薬品医療機器法に基づく「特例承認」を適用した。海外で販売されている薬が日本で承認されていない場合に審査期間を短くする。レムデシビルは米食品医薬品局(FDA)がすでに緊急使用を認めている。ギリアドが4日に承認を申請し、厚労省は4日間で審査を終えた。
米国立衛生研究所(NIH)が公表した治験結果によると、偽薬を投与した患者は回復に15日程度かかったが、レムデシビルを投与した場合は11日で済んだ。死亡率の明確な改善までは認められなかった。
厚労省は富士フイルム富山化学が開発した軽症者向けの治療薬「アビガン」も5月中の承認をめざしている。新型コロナの治療手段を増やして感染拡大を抑え、経済活動の再開を後押しする。
まとめ
広栄化学工業の株価は、日本政府が5月7日に抗ウイルス薬「レムデシビル」を新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認したことを受け急騰しました。
日本政府が新たに「アビガン」を新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認すれば、株価はさらに株価は急騰するかもしれません。
今後の動向が見逃せません。
財務状況もよく、確かな技術を持っていることからつぶれにくい企業だといえます。