芙蓉グループの総合商社大手の丸紅。
穀物、発電で商社首位を誇っています。
またプラントや輸送機、農業化学品にも強く、非資源分野に強みをもっている商社です。
2020年5月に赤字と減配を発表し、株価は下落トレンドなっています。現在の株価は500円を割っており、かなり安くなっています。
果たして今が買いなのでしょうか。
今回は、5大商社のひとつである丸紅についてご紹介していきます。
丸紅の株価状況
株価(5/19 15:00)
480.0
年初来高値
830.0(2020/1/21)
年初来安値
456.2(2020/5/14)
最高値(過去10年)
1,072.0(2018/10/2)
最安値(過去10年)
373.0(2011/10/5)
PER:8.08倍
PBR:0.54倍
配当金:15円
配当利回り:3.22%
配当性向:赤字
配当権利付き最終日:2020年9月28日、2021年3月29日
自己資本比率:29.3%
利益剰余金:1兆2,422億円
ROE:-11.3%
ROA:-3.01%
EPS:57.5円(予想)
丸紅の財務状況
自己資本比率:29.3%
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
自己資本比率は、自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)で算出します。
自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、倒産するリスクが高まります。
一方で自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。
自己資本比率は会社経営の安定性を表す数値であり、高いほどよいのです。
では自己資本比率がどのくらいなら倒産しない会社といえるでしょうか。
一般に自己資本比率が70%以上ならまずつぶれません。
40%以上なら倒産しにくい企業といえます。
丸紅の自己資本比率は、29.3%であり、低い水準と言えます。
ROE:-11.3%
ROEは、10~20%程度であれば優良企業であると判断されます。
自己資本利益率(ROE:Return on Equity)とは、自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の指標です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標です。
株主の立場から見ると、自己資本利益率が高い会社は「自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社」であると見ることができます。
丸紅は、株主から集めたお金と事業活動から得たお金をどれだけ有効活用しているか示すROEが-11.3%となっています。
今期赤字を計上したことにより収益率がマイナスとなりました。
ROA:-3.01%
ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ROA(総資産利益率:Return On Assets)とは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の収益性の指標です。
純資産(自己資本)、負債(他人資本)を含めた、すべての資本をいかに効率的に運用できているかを表す情報とも言えます。
一般的に、ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ただし、業種によって基準が変わってくるため、ROAを分析する際は同業種の水準と比較することが大切です。
丸紅のROAが-3.01%であり低い値です。
ROE同様にマイナスです。
EPS:57.5円
EPS:Earnings Per Share(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、1株に対して当期純利益がいくらあるのかを表す指標です。
「1株利益」「1株あたり当期純利益」と呼ばれることもあります。
EPSとは、成長性を見る指標です。EPSの推移を見るようにしましょう。
順調にEPSが増えていれば、成長性のある企業であると言えます。
EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。
順調にEPSが増えている企業は、安定的に収益をあげ、しかも成長中の企業なので、投資先として検討しましょう。
以下は丸紅のEPSの推移を表したグラフです。
2014年:121.4円
2015年:60.8円
2016年:35.8円
2017年:89.4円
2018年:121.6円
2019年:132.9円
2020年:-113.6円
2021年(予想):57.5円
丸紅のEPSは、上がり下がりのある推移となっています。
2016年までは下落基調でしたが、2017年から2019年までは上昇基調となっています。
2020年は、赤字に転落したことでマイナスとなりました。
2021年も新型コロナウィルスの影響で低水準となっています。
PER:8.08倍
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)とは、財務分析で企業の成長性を分析するときに利用する指標の一つであり、株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表すものです。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高だと判断できます。
PERは会社の利益を基準に判断し、PBRは会社の資産を基準に判断されます。
PER15倍以下なら割安と言われています。
現在の丸紅のPERは8.08倍であり割安水準です。
PBR:0.54倍
PBR:Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表す指標です。
PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。
PBRの目安は1倍以下です。
一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。
PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。
丸紅のPBRは、0.54倍となっておりかなりの割安水準となっています。
株価指標の読み方については、以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。
丸紅の株価推移
10年チャート
出所)丸紅(株)【8002】:株式/株価 - Yahoo!ファイナンス
1年チャート
出所)丸紅(株)【8002】:株式/株価 - Yahoo!ファイナンス
新型コロナウィルスの影響により株価は、400円近く下落しました。
現在は400円台後半で推移しています。
4年前の2016年の安値水準です。
5月7日、取引時間中の発表を受け丸紅株は一時、前営業日比42円20銭(8%)安の462円50銭まで下落し、年初来安値(458円20銭)に迫りました。
決算発表後、他の商社以上に下げ幅を大きくした要因は、減配報道です。
減配に嫌気を指した投資家により売られた模様です。
丸紅の事業内容
丸紅の事業は、食料・アグリ・化成品グループ、エネルギー・金属グループ、電力・インフラグループ、社会産業・金融グループ、CDIOの5つのグループから構成されています。
出所)丸紅株式会社
丸紅の当期利益の推移
当期純利益は、2020年に赤字を計上しました。
2021年は、1,000億円を予想していますが、黒字を確保できるか分からない状態です。
2012年:1,721億円
2013年:1,301億円
2014年:2,109億円
2015年:1.056億円
2016年:622億円
2017年:1,553億円
2018年:2,112億円
2019年:2,308億円
2020年:-1,974億円
2021年(予想):1,000億円
丸紅の純利益は、上がり下がりのある推移となっています。
2016年までは下落基調でしたが、2017年から2019年までは上昇基調となっています。
2020年は、赤字に転落し、2021年も新型コロナウィルスの影響で低水準となっています。
丸紅の配当金の推移
2014年:25.0円
2015年:26.0円
2016年:21.0円
2017年:23.0円
2018年:31.0円
2019年:34.0円
2020年:35.0円
2021年:15.0円(予想)
2016年から2020年まで増配傾向にありましたが、2021年は減配に転じることなりました。
半値以上減少の一株あたり15円の予想しています。
この減配も影響し、減配発表のあった5月7日に株価は下落しています。
丸紅の配当権利付き最終日は「2020年9月28日、2021年3月29日」です。
丸紅の配当性向の推移
配当性向は、1株当たりの利益のうちどれだけの割合を配当金に当てたかを示す指標です。
配当性向は、以下の数式で求められます。
当期純利益÷配当金総額
EPS(1株当たり純利益)÷1株当たり配当金
2014年:20.59%
2015年:42.78%
2016年:58.61%
2017年:25.73%
2018年:25.50%
2019年:25.59%
2020年:赤字
丸紅の配当性向は、2015年、2016年を除き30%以下で抑えられており比較的余裕のある配当をしてきました。
2020年は赤字転落となり一株あたり純利益はマイナスとなりながらも配当を行う状態となっています。
丸紅の業績と今後について
ここ数年、資源価格の下落の影響により、資源分野が強みの商社は利益を大きく減らしています。
丸紅は、これまで非資源分野が強く、純利益の大半を非資源分野が占めていました。
そのため、過去、資源価格が下落したとしても黒字を維持していました。
また、非資源分野を武器に業績を伸ばしてきました。
しかし、2020年3月期の決算では、強みであった非資源分野の伸び悩みと、資源分野の業績不振により赤字転落となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大で、資源事業の市況が急激に悪化、1~3月期に減損など一過性の損失が大きく影響しました。
資源価格の下落を背景に、石油・ガス開発事業やチリの銅事業などで大きくマイナスとなっています。
資源分野のエネルギー事業で-1,493億円となっています。
非資源分野でも赤字が目立っています。
アグリ事業(農業、穀物関連事業)で-771億円、プラント事業で-278億円となっています。
つまり、原油価格の下落以外の丸紅の強みでうる本業で失敗をしているのです。
丸紅は穀物、発電で商社首位を誇ってきました。
またプラントや輸送機、農業化学品にも強みをもっています。
しかし、丸紅の強みである事業が今回は振るわない状況なのです。
本業の非資源分野を立て直せるかがキーとなってきます。
2021年3月期は財務の安定を優先し投資や配当を抑えるとのことです。2021年は減配予想となっています。
まず今期は減配により前期比で200億円程度のキャッシュを確保するほか、自社株買いを22年3月期まで実施しない方針を示しています。
さらに事業計画の見直しを進め、今期の新規投資と設備投資は2500億円と前期比で580億円減らすとのこと。
資産売却などでも1000億円程度のキャッシュを確保し財務改善を図る模様です。
財務体質の改善後は、株主還元を再強化するとしていますがいばらの道になりそうです。
丸紅は、新型コロナの感染拡大に伴う世界経済への影響は、22年3月期まで残ると想定しています。
まとめ
丸紅は、ひとまず様子見が良いかもしれません。
株価は安価になってきましたが、今後の先行きが見通さず、2021年3月期は減配予想です。
たとえ株価が上昇しないとしても、高い配当が期待できれば買いを検討しても良いでしょう。
しかし、現在の丸紅は、業績が良くない上、減配を発表したことで配当利回りは3%に下落となってしまいました。
今は買い時ではないでしょう。