バイクの売上ではホンダに次ぐ世界2位のグローバル企業、ヤマハ発動機。
楽器のヤマハが発祥の輸送機器メーカーです。
現在では楽器のヤマハから独立し、株の相互持ち合いをしていることから楽器のヤマハとは別会社です。
ヤマハ発動機の魅力は、PER5.56倍と他のバイクメーカーよりも割安である点と、配当利回り6.42%という高配当銘柄である点です。
今回は、ヤマハ発動機についてご紹介していきます。
- ヤマハ発動機の株価状況
- ヤマハ発動機の財務状況
- ヤマハ発動機の株価推移
- ヤマハ発動機の事業内容
- ヤマハ発動機の当期利益の推移
- ヤマハ発動機の配当金の推移
- ヤマハ発動機の配当性向の推移
- ヤマハ発動機の業績と今後について
- まとめ
ヤマハ発動機の株価状況
株価(5/22 15:00)
1,400
年初来高値
2,222.0(2020/1/20)
年初来安値
1,121.0(2020/3/19)
最高値(過去10年)
3,935.0(2018/1/9)
最安値(過去10年)
625.0(2012/7/26)
PER:5.56倍
PBR:0.70倍
配当金:90円
配当利回り:6.42%
配当性向:33.91%
配当権利付き最終日:2020年6月26日、2020年12月28日
自己資本比率:46.0%
利益剰余金:6,070億円
ROE:11.3%
ROA:5.2%
EPS:234.4円(予想)
ヤマハ発動機の財務状況
自己資本比率:46.0%
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
自己資本比率は、自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)で算出します。
自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、倒産するリスクが高まります。
一方で自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。
自己資本比率は会社経営の安定性を表す数値であり、高いほどよいのです。
では自己資本比率がどのくらいなら倒産しない会社といえるでしょうか。
一般に自己資本比率が70%以上ならまずつぶれません。
40%以上なら倒産しにくい企業といえます。
ヤマハ発動機の自己資本比率は、46.0%であり、倒産しにくい企業だといえます。
ROE:11.3%
ROEは、10~20%程度であれば優良企業であると判断されます。
自己資本利益率(ROE:Return on Equity)とは、自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の指標です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標です。
株主の立場から見ると、自己資本利益率が高い会社は「自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社」であると見ることができます。
ヤマハ発動機は、株主から集めたお金と事業活動から得たお金をどれだけ有効活用しているか示すROEが11.3%となっています。
これは、同業他社であるホンダ、スズキ、カワサキよりも高い値です。
収益性が高い優良企業だといえます。
ROA:5.2%
ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ROA(総資産利益率:Return On Assets)とは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の収益性の指標です。
純資産(自己資本)、負債(他人資本)を含めた、すべての資本をいかに効率的に運用できているかを表す情報とも言えます。
一般的に、ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ただし、業種によって基準が変わってくるため、ROAを分析する際は同業種の水準と比較することが大切です。
ヤマハ発動機のROAが5.2%でありもう一歩です。
同業他社である、ホンダ、スズキ、カワサキよりも高く、収益性が高い企業です。
EPS:229.0円
EPS:Earnings Per Share(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、1株に対して当期純利益がいくらあるのかを表す指標です。
「1株利益」「1株あたり当期純利益」と呼ばれることもあります。
EPSとは、成長性を見る指標です。EPSの推移を見るようにしましょう。
順調にEPSが増えていれば、成長性のある企業であると言えます。
EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。
順調にEPSが増えている企業は、安定的に収益をあげ、しかも成長中の企業なので、投資先として検討しましょう。
以下はヤマハ発動機のEPSの推移を表したグラフです。
2014年:195,7円
2015年:171.9円
2016年:180.8円
2017年:290.9円
2018年:267.4円
2019年:216.8円
2020年(予想):229.0円
ヤマハ発動機のEPSは、概ね横ばい状態です。
成長企業とはいえません。
2017年に最高値をつけその後は下落基調にあります。
2020年の会社予想は新型コロナウィルスによる影響を織り込んでいないため、大幅な下方修正が予想されます。
PER:5.56倍
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)とは、財務分析で企業の成長性を分析するときに利用する指標の一つであり、株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表すものです。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高だと判断できます。
PERは会社の利益を基準に判断し、PBRは会社の資産を基準に判断されます。
PER15倍以下なら割安と言われています。
現在のヤマハ発動機のPERは5.56倍でありかなりの割安水準です。
同業他社よりも低く、業界内でも比較的割安です。
ただし、上記PERは、新型コロナウィルスの影響を加味していない値であることから、業績が悪化すればPERは上昇し割高となってしまいます。
今後の決算発表に注目したいところです。
PBR:0.70倍
PBR:Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表す指標です。
PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。
PBRの目安は1倍以下です。
一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。
PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。
ヤマハ発動機のPBRは、0.70倍となっており割安水準となっています。
ただし、このPBRは、先ほどのPER同様、新型コロナウィルスの影響を加味していない値であることから、業績が悪化すれば上昇し割高となります。
今後の決算発表に注目したいところです。
株価指標の読み方については、以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。
ヤマハ発動機の株価推移
10年チャート
出所)ヤマハ発動機(株)【7272】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス
1年チャート
出所)ヤマハ発動機(株)【7272】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス
コロナショックにより株価は、500円以上下げ、一時1,000円に迫る勢いでした。
その後も低調に推移しており、現在は1,400円前後で推移しています。
ヤマハ発動機の事業内容
ヤマハ発動機は、二輪車の開発を起点とするパワートレイン技術、走行・航走を支える車体・艇体技術をコア・テクノロジーとし、さらに制御技術やコンポーネント技術を発展させながら、半世紀にわたって事業の多軸化とグローバル化に取り組んできました。
パワートレイン技術はやがてマリンエンジンやRV、パワープロダクツ事業といった新たな軸を生み出し、また艇体技術のひとつであるFRP加工技術はプール事業をはじめ、各種パーソナルビークルの外装品などに発展しています。
当社設立以来の主幹事業である二輪車は、実用的な移動手段として、また趣味やスポーツの対象として人々に親しまれています。ATV(四輪バギー)やROV(レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル)は北米を市場として、不整地におけるスポーツ&レジャーや、第一次産業のフィールドで活躍しています。人がペダルを踏む力を電動モーターが補助する電動アシスト自転車は、世界に先駆けて当社が開発・販売し、現在では人々の暮らしの中に「便利で手軽な移動具」として定着しています。
クルージングやフィッシングなどを楽しむプレジャーボートや沿岸漁業で活躍する小型漁船の製造・販売を行っています。 その船を動かすエンジンの船外機は高い信頼性と環境性能を併せ持ち、世界中で愛用されています。ジェット推進機を搭載した水上オートバイは、マリンレジャーのパートナーや海難救助・パトロール機材として活躍しています。また、日本で初めてFRP製プールの製造を開始し、スクールプールの施工実績では日本国内のトップブランドです。
パソコンやスマートフォン等に内蔵されているプリント基板に微細な電子部品を実装する表面実装機では、印刷機やディスペンサー、検査装置を揃えたフルラインナップメーカーとして事業を展開しています。産業用ロボットでは、スカラロボットをはじめとする自動化ロボットを製造・販売し、生産現場の最適性を提案しています。また、農薬散布や測定・監視業務で活躍する産業用無人ヘリコプターや産業用ドローンなどのさまざまなアンマンド(無人)ビークルを開発しています。
事業運営基盤強化としてアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、ブラジル、メキシコの各国で金融サービス事業を進めています。お客さまとの結びつきを強め、安定した収益確保を目指します。
トヨタ自動車との共同による「トヨタ2000GT」の開発・生産を皮切りに自動車エンジンの開発・製造・販売を行っています。高齢者や障がいのある人の生活を支える電動車いす、ゴルフ場やレジャー施設で活躍するゴルフカー、小型エンジン技術を応用してできた発電機や汎用エンジン、雪国で活躍する除雪機などを製造・販売しています。
売上ではアジアが全体の43.5%を占めています。
日本は22.4%に過ぎず世界に事業を展開するグローバル企業だといえます。
売上ではランドモビリティが半分以上を占めていますが、営業利益ではマリン事業が最も多くの割合を占めています。
マリン事業の利益率の高さがうかがえます。
バイクの売上はアジアが60%以上を占めています。
マリン事業の売上は北米、特にアメリカの割合が多く、60%近くを占めています。ヤマハ発動機のポートは、アメリカの富裕層に人気があるメーカーです。
ヤマハ発動機の当期利益の推移
当期純利益は、2017年まで概ね上昇基調にありました。しかしその後は下落傾向にあります。
2012年:304億円
2013年:435億円
2014年:232億円
2015年:600億円
2016年:631億円
2017年:1,016億円
2018年:933億円
2019年:757億円
2020年(予想):800億円
当期純利益は、2017年から下落基調にあります。
米中貿易摩擦による投資の抑制や英国のEU離脱問題など不安定な環境の中が影響しているようです。
特にロボティクス事業、金融事業の減益による影響が大きかったようです。
ロボティクス事業の営業利益は、77億円(同90億円・53.9%減少)となりました。
米中貿易摩擦の影響によりサーフェスマウンターと産業用ロボッ トの販売台数が減少し、減収・減益となりました。
2020年の会社予想は新型コロナウィルスによる影響を織り込んでいないため、大幅な下方修正が予想されます。
ヤマハ発動機の配当金の推移
2014年:40円
2015年:44円
2016年:60円
2017年:88円
2018年:90円
2019年:90円
2020年:90円(予想)
ヤマハ発動機の配当金は、順調に増配を続けています。
今年は昨年同様、一株あたり90円の予想となっています。
この予想は新型コロナウィルスの影響を加味していないため、業績が悪化すれば減配の可能性があります。
仮に減配をしなかった場合、配当利回りを現在の株価と配当金90円から計算すると、90円÷1,400円×100=6.42%です。
このまま減配しなければ配当利回り6.42%でありかなりの高配当銘柄だといえます。
ヤマハ発動機の配当権利付き最終日は「2020年6月26日、2020年12月28日」です。
ヤマハ発動機の配当性向の推移
配当性向は、1株当たりの利益のうちどれだけの割合を配当金に当てたかを示す指標です。
配当性向は、以下の数式で求められます。
当期純利益÷配当金総額
EPS(1株当たり純利益)÷1株当たり配当金
2014年:20.64%
2015年:20.44%
2016年:25.64%
2017年:33.24%
2018年:30.30%
2019年:33.72%
2020年:41.59%
ヤマハ発動機の配当性向は、概ね40%以下で抑えられていることから、過度な配当金はしていない模様です。
次時点の予想では40%台とまだ配当金には余裕がありそうにも見えます。
しかし、この値は新型コロナウィルスの影響を考慮していません。
このまま配当金を昨年同様一株当たり90円とし、純利益が昨年から半減したとして2020年の配当性向を計算してみました。
2020年の一株当たり純利益が2019年の半額だとすると216.8円÷2=108.4円です。
このときの配当性向は90円÷108.4円×100=83%
よって純利益が昨年から半減した場合、2020年の配当性向は83%となります。
これは80%超は過度な配当状態であることから減配の可能性があります。
ヤマハ発動機の業績と今後について
ヤマハ発動機はここ数年の間、米中貿易摩擦による投資の抑制や英国のEU離脱問題など不安定な環境の中、成長率が低下しています。
先進国では、日本は緩やかな景気回復が続き、米国と欧州では成長が鈍化しています。
新興国では、ベトナムやフィリピンでは経済成長が拡大しましたが、インドネシア、タイ、インドでは景気が減速しました。
ヤマハ発動機は、輸出企業であることから為替の影響を大きく受けることになります。
近年の円高で利益が減少しています。
売上高は、マリン事業、金融サービス事業で増収となった一方で、ランドモビリティ事業と、 YMRH及びその子会社の事業統合影響を除いたロボティクス事業では減少し、全体では減収となりました。
営業利益は、先進国二輪車での欧州・本社生産の稼働率上昇や構造改革、インドネシア二輪車での高価格商品増加による収益性改善が進みましたが、ロボティクス事業などの売上高の 減少、成長戦略経費の増加、為替影響などにより、全体では減益となりました。
さらに、新型コロナウィルスの影響により今後の決算では相次ぐ減益が予想されます。
ヤマハ発動機は5月15日、産業用ロボット関連の2拠点を除く国内すべての事業所や工場、事務所の計46拠点を追加で臨時休業すると発表しています。
期間は6月8日~12日の5日間で、発表済みの分と合わせると計10日間となります。
新型コロナウイルス感染の影響で先進国の二輪車などの需要減が長期化すると判断したとのこと。
しかし、海外では工場再開の動きも見られます。
4月末から5月上旬にかけて新型コロナウイルスの感染拡大で操業を停止していた海外の二輪車工場を相次ぎ再開しました。
販売台数が最も大きいインドネシアのほか、先進国最大市場の欧州などが対象とのことです。海外での外出制限・休業措置の緩和を受け、再稼働に踏み切っています。
売上ではランドモビリティが半分以上を占めています。
しかし、営業利益ではマリン事業が最も多くの割合を占めています。
マリン事業の利益率の高さがうかがえます。
マリン事業の売上は北米、特にアメリカの割合が多く、60%近くを占めています。
営業利益の多くを占めるマリン事業は、世界の富裕層がターゲットであるため、景気が後退局面に入ると売上が減少することが予想されます。
今後の業績は厳しいものになりそうです。
まとめ
ヤマハ発動機の魅力は、PER5倍と他のバイクメーカーよりも割安である点と、配当利回り6.42%という高配当銘柄である点です。
しかし、業績の悪化から減配の可能性はあります。
トヨタ自動車をはじめとする輸送機器メーカーは、今回の新型コロナウィルスの影響で利益を大幅に減らしています。
先日発表されたトヨタ自動車の決算では利益が80%減。
ヤマハ発動機は新型コロナウィルスの影響を織り込んだ業績予想を発表していませんが、利益の大幅な減少が懸念されます。
いくら高配当割安銘柄とはいえ、減配の可能性もあり、いま積極的に買いとは言いがたい状況です。
しばらく様子見が良いでしょう。
5月29日に発表される決算の結果や今後の動向から判断したいものです。