企業研究

   

【武田薬品工業】配当利回り4%超だがシャイアー買収の影響はいかに!

 

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国内の製薬メーカーでNo.1の売上高を誇る武田薬品工業。製薬会社世界売上高でもトップ10入りを果たしています。

2019年1月にアイルランドの製薬超大手企業シャイアーを6.2兆円で買収したことで話題となりました。

しかしその後、コロナショックもあいまって株価は下落を続けましたが、最近はやや上昇傾向になってきています。

武田薬品工業の魅力は、配当利回り4%超という高配当銘柄である点です。

今回は、武田薬品工業ついてご紹介していきます。

 

武田薬品工業の株価状況

株価(2020/5/25 15:00)
4,118

年初来高値

4,526.0(2020/2/7)

年初来安値

2,894.5(2020/3/17)

最高値(過去10年)

6,693.0(2018/1/10)

最安値(過去10年)

2,894.5(2020/3/17)

 

PER:108.19倍

PBR:1.37倍

配当金(会社予想):40円

配当利回り:4.16%

配当性向(会社予想):22.9%

配当権利付き最終日:2020年9月28日、2021年3月29日

自己資本比率:37.4%

利益剰余金:1兆3,784億円

有利子負債:5兆2,217億円

ROE:2.2%

ROA:0.8%

EPS:28.41円

 

武田薬品工業の財務状況

自己資本比率:37.4%

自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値です。

自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。

 自己資本比率は、自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)で算出します。

自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、倒産するリスクが高まります。

一方で自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。

自己資本比率は会社経営の安定性を表す数値であり、高いほどよいのです。

では自己資本比率がどのくらいなら倒産しない会社といえるでしょうか。

一般に自己資本比率が70%以上ならまずつぶれません。

40%以上なら倒産しにくい企業といえます。

武田薬品工業の自己資本比率は、37.4%です。もう少しほしいところです。

 

ROE:2.2%

ROEは、10~20%程度であれば優良企業であると判断されます。

自己資本利益率(ROE:Return on Equity)とは、自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の指標です。

自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。

 ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標です。

株主の立場から見ると、自己資本利益率が高い会社は「自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社」であると見ることができます。

武田薬品工業は、株主から集めたお金と事業活動から得たお金をどれだけ有効活用しているか示すROEが2.2%となっています。

同業他社である大塚HDは7.3%、アステラス製薬は17.6%、中外製薬はROE20%超、第一三共は8%超であることから、他社比較でも低水準です。

ROEは決して高いとはいえない値です。

 

ROA:0.8%

ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。

ROA(総資産利益率:Return On Assets)とは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の収益性の指標です。

純資産(自己資本)、負債(他人資本)を含めた、すべての資本をいかに効率的に運用できているかを表す情報とも言えます。

一般的に、ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。

ただし、業種によって基準が変わってくるため、ROAを分析する際は同業種の水準と比較することが大切です。

武田薬品工業のROAが0.8%であり、低水準です。

同業他社である大塚HDは5%、アステラス製薬は11.8%、中外製薬はROA18%、第一三共は5%から、他社比較でも低水準です。

 

EPS:28.41円

EPS:Earnings Per Share(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、1株に対して当期純利益がいくらあるのかを表す指標です。

「1株利益」「1株あたり当期純利益」と呼ばれることもあります。

EPSとは、成長性を見る指標です。EPSの推移を見るようにしましょう。

順調にEPSが増えていれば、成長性のある企業であると言えます。

EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。

順調にEPSが増えている企業は、安定的に収益をあげ、しかも成長中の企業なので、投資先として検討しましょう。

以下は武田薬品工業のEPSの推移を表したグラフです。

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2014年:135.1円

2015年:-184.5円

2016年:101.4円

2017年:147.2円

2018年:239.4円

2019年:140.61円

2020年:28.41円

2021年:38.1円(会社予想)

武田薬品工業は、2015年に初の赤字となりマイナスとなっています。

EPSは、2018年から下落基調にあります。

業績好調とは言えない状況です。

 

 

PER:108.19倍

株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)とは、財務分析で企業の成長性を分析するときに利用する指標の一つであり、株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表すものです。

 

PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)

 

PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高だと判断できます。

PERは会社の利益を基準に判断し、PBRは会社の資産を基準に判断されます。

PER15倍以下なら割安と言われています。

武田薬品工業のPERは36.96倍であることから、割高水準です。

同業他社である、大塚HDは14.2倍、アステラス製薬は14.3倍、第一三共は36倍と他社比較でも割高です。

 

 

PBR:1.37倍
PBR:Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表す指標です。

 

PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。

 

PBRの目安は1倍以下です。

一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。

PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。

武田薬品工業のPBRは、1.23倍となっており割安圏まであともう少しです。

ちなみに同業他社である大塚HDは1.17倍、アステラス製薬は2.26倍です。

 株価指標の読み方については、以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。

toshilife.hatenablog.jp

 

武田薬品工業の株価推移

10年チャート

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出所)武田薬品工業(株)【4502】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス

 

1年チャート

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出所)武田薬品工業(株)【4502】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス

2018年にシャイアー社の買収を発表後、株価は下落トレンドとなっています。

買収計画が明らかになる前の17年末と比べ株価は4割近く安くなりました。

また、新型コロナウィルスの影響により株価は、1,500円以上下落しました。

その後は反発し4,100円台後半まで戻しています。

 

武田薬品工業の事業内容

 研究開発活動

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タケダの研究開発グローバルチームは、外部のパートナーとともに、世界中の患者さんにより健やかで輝かしい未来をお届けするために、最先端の科学で革新的な医薬品を提供することを目指しています。
研究開発では、オンコロジー(がん)、希少疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域と、血漿分画製剤およびワクチンへの投資に注力し、業界を越えた連携を通じて、いまだ有効な治療法がない疾患への医療ニーズを解決するために最先端のイノベーションを生み出します。

私たちは、重点疾患領域に対し精力的に注力することで、常に患者さんを中心に考える、グローバルな研究開発型バイオ医薬品のリーディングカンパニーとなるのにふさわしい規模と専門性を有しています。

 

重点領域

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タケダは研究開発において、オンコロジー(がん)、希少疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に注力しています。さらに、血漿分画製剤およびワクチンの研究開発に関する投資を行います。

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主要製品

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タケダは、優れた医薬品の創出を通じて、人々の健康と医療の未来に貢献することに取り組んでいます。私たちは、研究開発において、オンコロジー(がん)、希少疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に注力しています。さらに、血漿分画製剤およびワクチンの研究開発に関する投資を行います。

 

グローバル拠点

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消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー、ユーロサイエンス、その他の6つのビジネスエリアで構成されています。

武田薬品工業は、その他を除く5つの主要ビジネスが、売上収益において約75%を占めています。

なかでも、希少疾患の占める割合が最も大きく売上収益の21%を占めています。

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売上収益に占める日本の割合は18%に過ぎません。

のこり82%は海外による売上収益となっておりグローバル企業です。

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社長もフランス人、役員の半数以上が外国人であることから 日本の企業でありながら海外企業のようです。

出所)武田薬品国内サイト|患者・医療関係者・採用の情報

 

武田薬品工業の当期利益の推移

当期純利益は、2018年まで上昇傾向にあり、20同年に最高益である、1,868億円を突破しました。

しかし、その後は下落基調になっています。

2013年:1,312億円

2014年:1,066億円

2015年:-1,457億円

2016年:801億円

2017年:1,149億円

2018年:1,868億円

2019年:1,351億円

2020年:442億円

2021年:600億円(会社予想)

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2015年は赤字となっています。このとき上場来初の赤字となり、市場にも影響を与えた出来事でした。

2015年から2018年までは上昇傾向にありましたが、その後は下落基調となっています。

 

武田薬品工業の配当金の推移

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武田薬品工業の配当金は、ここ5年以上180円で一定の値となっています。

2014年:180円

2015年:180円

2016年:180円

2017年:180円

2018年:180円

2019年:180円

2020年:180円

2021年:180円(会社予想)

今年の配当金は、昨年同様、一株あたり180円の予想しています。

2015年は業績が悪化し赤字となりましたが、配当金180円を維持していることから、今年も減配せず180円の配当が支払われてる可能性が高いでしょう。

武田薬品工業の配当権利付き最終日は「2020年9月28日、2021年3月29日」です。

 

武田薬品工業の配当性向は600%超!

配当性向は、1株当たりの利益のうちどれだけの割合を配当金に当てたかを示す指標です。

配当性向は、以下の数式で求められます。

当期純利益÷配当金総額

EPS(1株当たり純利益)÷1株当たり配当金

2020年、武田薬品工業は、当期純利益の633.57%を配当金として株主に分配する予定です。

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2013年:93.24%

2014年:133.26%

2015年:赤字

2016年:177.44%

2017年:123.79%

2018年:76.54%

2019年:128.01%

2020年:633.57%

2021年:471.44%(予想)

武田薬品工業の配当性向は、ここ数年100%を超える年が多数存在し、配当過多の状態が続いています。

特に2020年3月期は業績が低迷しているにもかかわらず、配当金に変化がないことから配当性向が600%超という非常に高い値となっています。これは1年で稼いだ当期純利益の6倍以上の金額を配当金として支払う計算です。

企業が稼いだお金から過度に株主に還元している場合、会社を成長させるための原動力となる研究開発に資金を十分回すことができなくなってしまいます。

武田薬品工業は、配当金の支払いもとである純資産1兆円に比べ、借金である有利子負債は5兆円を超えていることから、借金が多額であるにもかかわらず過度な配当を行なっているように感じます。

 

武田薬品工業はのれんが肝!

武田薬品工業は5月13日、2021年3月期の連結純利益(国際会計基準)が600億円と前期比36%増える見通しだと発表しました。

主力製品が好調なほか、アイルランドの製薬大手シャイアー買収に関連する費用が減少したため、当初計画以上にコスト削減が進んでいるとのこと。

2019年1月にシャイアー買収を完了し、通期でシャイアーののれんを業績を取り込むのは今期で2期目です。

のれんとは、簡単に言うと、企業を買収するときに、企業が持つブランドや技術の価値を上乗せして支払う金額のことです。

例えば、「純資産」が1兆円だった場合、本来は株主に1兆円を支払えば企業を買収できます。

しかし、実際には1兆円以上支払わないと買収できないことがほとんどです。

仮に2兆円で買収したとすると、「買収価格2兆円-買収される企業の純資産1兆円=1兆円」が、のれんです。

のれんは企業の業績に悪影響を及ぼすこともあります。

もともと目に見えない資産なので、価値を正確に判断できません。

そのため、買収したあとに「ブランド力に1兆円の価値があると思ったけれど、実際は5,000億円しかなかった」という事態が起きる場合があります。

逆に想定したブランド力以上に価値があったという場合もあります。

万が一、のれんの価値が低いとわかったときは、その分だけ損失として計上しなければなりません。

先ほどの例でいえば企業の利益が5,000億円分なくなってしまうので、注意が必要です。

今回の武田薬品工業によるシャイアーの買収総額は約6.2兆円となりました。

これは、 日本企業による海外M&A(合併・買収)として過去最大の規模です。

買収総額6.2兆円のうちシャイアー社の純資産4兆円を引いた3兆円の「過剰支払い」が発生しています。

この「過剰支払い」のうち、 2兆円は特許権や営業権、 仕掛研究開発費など、 「将来回収できる見込み」を前提となっています。

残りの1兆円が今回の買収による「のれん」として計上されました。

しかし、すでに武田薬品には1兆円、 シャイアー社には2兆円の「のれん代」が存在していました。

つまり、シャイアー社の買収により新たに3兆円の「のれん」が計上されたわけです。

武田薬品工業のもともとの「のれん」1兆円+シャイアーの買収による「のれん」3兆円から、合併後の武田薬品工業の「のれん」合計は4兆円に達しているわけです。

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この買収による「のれん」3兆円も買収金額とともに過去最大級となりました。

今後、このシャイアーの企業価値が3兆円あるかどうかを計る減損が行われます。

この減損によりシャイアーの企業価値が3兆円もないと判断されれば、その分だけ武田薬品の利益が減ってしまいます。

そのため、武田薬品はある意味、シャイアーの「のれん」3兆円と自社の「のれん」1兆円で合計4兆円の爆弾を抱えているともいえるわけです。

ただし懸念材料ばかりではありません。

のれんに関連した好材料もあります。

2021年3月期の連結純利益が前期比36%増える理由の一つとして会計上の費用が減る点が挙げられます。

一般に買収の際には、対象企業の在庫(棚卸し資産)や特許(無形資産)などを時価(市場価値)に洗い替えします。

製薬会社の在庫は当初の製造原価は低いですが、市場に出回ると評価が高まることから、在庫評価と市場での売価に差異が生じます。

買収以前のシャイアーの在庫評価は3805億円となっていました。

しかし、再算定により7518億円に増加したとのこと。

この影響で前期は売上原価で1910億円処理していましたが、今期は857億円にとどまる見通しです。

統合関連費用の減少も追い風となっています。

シャイアー買収後に営業拠点の閉鎖やシステムの統合などを進めて前期に1354億円計上した費用が、今期は900億円まで減少するとのことです。

22年3月期までに税引き前で20億ドル(約2140億円)のコスト削減を目標としていましたが、こうした取り組みにより、すでに11億ドルの削減を達成したとのことです。

武田薬品工業は、今後の効果も見込み、削減目標を23億ドルに上方修正しました。

 

武田薬品工業の今後の業績について

今年度の売上収益は、前年度から1兆1,940億円(+56.9%)の3兆2,912億円となりました。

売上高が上昇しており好材料のように思われるかもしれませんが、シャイアー社買収により獲得した製品の売上が年間を通じて計上された(1兆5,222億円)ことが主な要因であり、これによる増収額は1兆2,130円となりました。

来年度の売上高にあたる売上収益は1%減の3兆2500億円を見込んでいます。

武田薬品工業は、大型買収に伴い膨らんだ有利子負債の削減に向けた非中核事業の売却も進めています。

武田薬品工業の有利子負債はなんと5兆円以上にものぼります。

重点領域以外の事業や資産を2023年3月期までに最大100億ドル(約1.1兆円)売却し、約5兆円ある有利子負債を削減する方針を掲げています。

複数の非中核事業を前期に売却した影響が出る予想です。

とはいうものの、本業のもうけを示す「コア営業利益」は9840億円と2%増加するとのことです。

前期に3472億円販売した潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」は今期24%伸び血液がん治療薬「ニンラーロ」も約1割増える見込みです。

シャイアーが得意としていた人間の血液に由来する成分からつくる「血漿(けっしょう)分画製剤」も1~2割成長する見込みです。

武田薬品工業は、この薬を新型コロナウイルスの治療薬として開発を進めており、7月にも臨床試験(治験)を始め、年内にも承認申請をする意向を示しています。

しかし、シャイアーとの統合後の作業が進む一方で市場からの評価は芳しくない状態です。

買収計画が明らかになる前の17年末と比べ株価は4割近く安くなっています。

その間に血友病治療の新薬で業績を伸ばす中外製薬に時価総額で抜かれています。

また、画期的な抗がん薬で将来成長が期待される第一三共にも詰められている状態です。

「グローバルに売り上げが成長する薬を14も抱えている企業は世界にない」と武田薬品工業のウェバー社長は言っています。

この言葉にあるように収益分散化が図られている点は評価できます。

現に買収関連費用などを除いた今期のコアEPS(1株当たり利益)は420円と、買収前の18年3月期に比べ4割ほど増える見通しとなっています。

しかし、武田の弱点といえる点もあります。

世界では販売額が2兆円を超える薬もある中で武田には大型薬が少ないのです。

利益率が高い希少疾患などに活路を見いだしていますが、特許切れも迫っています。

日本政府もジェネリック医薬品の使用を推奨している状況です。

買収から実質2年目を迎え、内部管理体制の構築から、収益化に向けた実績を積み上げる段階へと早期に移る必要があります。

買収によるシナジー効果をどこまで発揮できるかが株価回復の鍵となりそうです。

 

まとめ

シャイアーの買収に伴う懸念材料が多く業績も好調とはいえないため、積極的には買えない銘柄と言えるでしょう。

収益率も同業他社と比べ低く、シャイアーの買収による「のれん代」や有利子負債も5兆円と多額であり、優良銘柄とはいえない状態です。

配当利回りは4%超と高配当銘柄ですが、先行きが不透明であることから様子見が良いかもしれません。

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