
23日の米株式市場では、ダウ工業株30種平均が4日続伸しました。
機関投資家の運用指標であるS&P500種株価指数は再び最高値を更新し、米株高基調の強さを改めて示しています。
今回は、直近、米国株が上昇を続けている理由とその中に潜む今後の懸念材料について見ていきます。
直近、S&P500が上昇している理由
背景にあるのは、堅調な景気指標と減速感のある雇用・消費指標が併存する「米経済の二極化」です。
この一見矛盾した状況が、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和期待を高め、株式市場を下支えしています。
この日のダウ平均は、朝方に100ドル超下落する場面がありましたが、その後は切り返しました。
S&P500種は終値6909.79と、11日以来およそ2週間ぶりに最高値を更新しています。
株価が堅調に推移した理由は、同日に発表された2つの経済指標が、相反するシグナルを市場に与えたことにあります。
まず、政府閉鎖の影響で公表が遅れていた7〜9月期の米実質GDP速報値は、前期比年率4.3%増と市場予想(3.2%増)を大きく上回りました。
米経済の底堅さが意識され、FRBが利下げに慎重になるとの見方から米長期金利が上昇し、株式市場では一時的に売りが先行しました。
一方、その後に発表された12月の米消費者信頼感指数は89.1と、前月から3.8ポイント低下し、市場予想(91.0)も下回りました。
足元で消費者マインドが悪化しているとすれば、FRBは景気下支えのため利下げを継続せざるを得ないとの見方が広がります。
好調なGDPと弱含む消費指標を「いいとこ取り」する形で、投資家心理は再び強気に傾き、株価の押し上げ要因となりました。
7〜9月期のGDPの内訳を見ると、個人消費は前期比年率3.5%増と、4〜6月期(2.5%増)から伸びが加速しています。
イートロのブレット・ケンウェル氏は「消費が米経済のけん引役となっており、底堅さが続けば企業収益の追い風になる」と指摘します。
好調なハイテク株
目先の人工知能(AI)の先行きを巡る不透明感がいったん薄れたことでハイテク株を買い直す動きがあり、相場を押し上げていることも影響しています。
トランプ米政権がAI半導体「H200」の対中輸出に向けた審査を始めたとロイター通信が18日に伝え、承認を受ければ、エヌビディアの収益拡大につながるとの期待からエヌビディアは上昇。
エヌビディアが9月に発表した50億ドル規模のインテルへの出資案を米連邦取引委員会(FTC)が18日に承認し、インテルの業績回復への追い風になるとの見方からインテルも上位。
中国発の動画共有アプリ「TikTok」の米国事業について、運営企業がオラクルを含む米企業との合併企業の設立に合意したと18日明らかになり、材料視されたことから、オラクルも上昇をしていました。
また、17日夕に半導体メモリーのマイクロン・テクノロジーが発表した2025年9〜11月決算が好調だったことから、AI関連の需要が根強いとの見方が広がっています。
市場では「AI関連需要が当面、底堅さを保つことが確認され、ハイテク株に買い直しが入りやすくなっている」(Bライリーのアート・ホーガン氏)との声が聞かれている状況です。
ハイテク株は前週末から今週半ばにかけて、AI関連事業を巡る先行きの不透明感から下げが目立っていましたが、短期的に売られすぎていたとの見方があるなか、好材料が重なりハイテク株の買いにつながっていることが、連日の株価続伸の理由の一つです。
「不況なき金融緩和」が、K字型経済をより鮮明に
もっとも、米経済全体を均一に見れば楽観はできません。
今年、米経済を象徴する言葉として頻繁に使われたのが「K字型経済」です。
K字型経済とは、経済が二極化し、所得層や企業によって「上向き(富裕層・好調企業)」と「下向き(貧困層・不調企業)」の2つの道に分かれて進展する現象で、グラフで表すとアルファベットの「K」の字のように見えることから名付けられました。
株高による資産効果で高所得層は消費を拡大する一方、低所得層はインフレや雇用環境の悪化に直面し、節約志向を強めています。
人工知能(AI)の普及も影響し、労働市場は想定ほど改善していません。
FRBは雇用の減速を意識して金融緩和を続け、不況を伴わない形で株高が進行しています。
この「不況なき金融緩和」が、K字型経済をより鮮明にしている可能性もあります。
バンク・オブ・アメリカは、22日公表のリポートで、米消費の大部分は高所得層と中所得層が占めているため、当面は「K字型」の経済成長が続くと分析しました。
一方で、低所得世帯の約3割が日々の生活に追われる状況にあり、政治・社会的な課題として無視できないと警鐘を鳴らしています。
「K字型」の経済成長の解決のカギは?
こうした問題の解決には、金融政策よりも政治の役割が重要との見方もあります。
11月のニューヨーク市長選では、生活の手ごろさ(アフォーダビリティー)を訴えたゾーラン・マムダニ氏が勝利しました。
生活支援を重視する姿勢が、有権者の支持を集めた形です。
米国では2026年秋に中間選挙を控えています。
トランプ大統領も住宅価格高騰への対応を打ち出すなど、アフォーダビリティーを意識した政策姿勢を強めています。
選挙を見据え、国民に支持されやすい政策が相次ぐ可能性もあり、市場への影響が注目されます。
好調な消費と雇用の減速が併存するK字型経済は、株高を演出してきました。
この構図に変化が訪れるのか、来年に向け、投資家が注視すべき重要なテーマの一つとなりそうです。