
外国為替市場では、円相場の上昇余地が乏しい状況が続いています。
米国とイランの停戦協議が伝わった局面でも、円は対ドルでほとんど反応を示さず、市場では円高シナリオへの懐疑的な見方が広がりつつあります。
日本時間6日午前、米メディアが「米国とイランが45日間の停戦に向けて協議中」と報じました。
これを受けて株式市場ではリスク選好の動きが強まりましたが、為替市場では円はわずかに上昇するにとどまり、反応は限定的でした。
一方で、米大統領による強硬発言もあり、為替市場の不安定さは継続しています。
7日の東京市場では円は一時1ドル=159円90銭台まで下落し、心理的節目である160円が目前に迫りました。
原油高が円安圧力の主因に
円相場の重荷となっている最大の要因は、原油価格の高騰です。
米指標原油であるWTI先物は一時1バレル116ドル台に上昇し、中東情勢悪化前と比較して大幅な上昇となっています。
エネルギー輸入依存度の高い日本にとって、原油高は貿易赤字拡大に直結します。
その結果、輸入決済に伴う「円売り・ドル買い」のフローが増加し、構造的な円安圧力が強まります。
さらに市場では、仮に停戦が実現した場合でも円安圧力が弱まらない可能性が指摘されています。
ホルムズ海峡の航行が正常化し、原油取引が活発化すれば、実需に基づくドル需要が一段と増加するとの見方です。
実需主導のドル買いが相場を下支え
これまでの円安は主に「期待」によるものでしたが、今後は実際の取引を伴う実需主導へと移行する可能性があります。
原油取引の決済に加え、輸入企業によるドル調達需要も円の上値を抑える要因です。
足元では、輸入企業の為替行動にも変化がみられます。
従来は1ドル=155円台がドル買いの目安でしたが、現在では155〜159円台前半でも積極的にドルを確保する動きが広がっています。
市場では「当面は円高になりにくい」との認識が共有されている状況です。
原油価格次第で170円台も視野に
為替への影響を試算すると、エネルギー価格の上昇が円安に与えるインパクトは無視できません。
過去のデータでは、経常収支が1兆円悪化すると、円は年間で約1%下落する傾向が確認されています。
2025年の燃料輸入額を基準に考えると、エネルギー価格が10%上昇すれば輸入額は約2.2兆円増加し、円は約2%下落する計算となります。
仮に原油価格が年間平均で100ドル前後に達した場合、輸入額は10兆円以上増加する可能性があり、理論上は円に約10%の下落圧力がかかります。
現在の水準から換算すると、1ドル=170円台に到達する余地も意識されます。
25年の原油価格(WTI先物)の年間平均は1バレル64ドル台。仮に、26年の原油価格が100ドル程度となる場合、単純計算で燃料輸入額は10兆円超増える。この点だけを踏まえれば円には10%程度の下落圧力が働き、足元の水準に照らせば1ドル=170円台まで下げ余地が生じる形だ。
投機筋より実需が主役の相場へ
これまで円相場を動かしてきた投機筋の動きにも変化が見られます。
足元では円売りポジションは縮小しており、投機主導の円安は一服しています。
その一方で、実需によるドル買いの影響力が増しており、相場の性質はより粘着的な円安へと変化しつつあります。
この構図が続く限り、160円台の定着は十分に現実的なシナリオといえます。
投資視点:円安トレンドは構造的に継続か
今後の円相場を展望するうえで重要なのは、「地政学リスクの解消=円高」という従来の図式が崩れつつある点です。
原油価格の高止まりと実需ドル買いの増加が続く限り、円安圧力は構造的に残ります。
短期的な材料に一喜一憂するよりも、エネルギー価格と貿易収支の動向を軸に、中長期の為替トレンドを見極める必要がありそうです。