
S&P500指数は3月10日、相場の長期トレンドを示す200日移動平均を下回りました。
投資家のリスク許容度を映す、「恐怖と強欲指数」は同日、2022年9月以来の水準に低下しました。
これは、投資家が急速に弱気に傾き、投資を控える、あるいはポジションを減らしていることを意味します。
今回は、3つの指標から、現在の市場相場が、弱気であることを示したうえで、弱気となった理由と、最後に今後の先行きについてご紹介します。
貿易戦争の激化などから米国株は、調整色が一段と強まる瀬戸際を迎えていることが明らかになります。
- 恐怖と強欲指数とは?
- 恐怖と強欲指数が「極度の恐怖へ」
- 200日移動平均を下回った
- フィラデルフィア半導体株指数(SOX)がデッドクロス
- 投資家が急速に弱気になった理由
- 今後の先行きの見方は意見が分かれている
恐怖と強欲指数とは?

米CNNが算出する「恐怖と強欲指数(Fear & Greed Index)」は、3月10日に「14」をつけました。
これは約2年半ぶりの低水準です。
「恐怖と貪欲指数」(FGI)は、人々が暗号資産に対してどのように感じているかを0から100までの数値で測定するものです。
欲望指数が高いと市場のトレーダーが過度に楽観的であることを示し、恐怖指数が高いと市場のトレーダーが過度に恐れていることを示します。
株式市場の神様とも言われるウォーレン・バフェットはかつて、「他の人が欲望を抱いているときに私は恐れ、他の人が恐れているときに私は欲望を抱く」と言いました。これは恐怖と欲望指数が示すことです。
投資の世界で、恐怖と欲望指数の使い方を理解すれば、この言葉の本当の意味がわかります。
金融市場は非常に変動性が高く、感情が影響を与えやすいものです。
市場が上昇すると、人々は欲望を抱きやすく、欲望指数は高くなります。
逆に、市場が下落すると投資家はパニックに陥りやすくなります。
この恐怖と欲望指数を使えば、いくつかの簡単な判断が可能です。
まず、極端な恐怖の状態では、投資家が過度に心配していることを示し、これは購入の好機を意味する場合があります。
一方、市場が極端に欲望に満ちている場合、市場は調整が必要であり、これは売却のサインと見なされることがあります。
一般的に、低い値(通常20以下)は市場の投資家がより恐れていることを示し、売りの兆候が見られる場合があります。
高い値(通常80以上)は、市場の投資家が過度に欲望を抱いており、買いの兆候が見られる場合があります。中間の値は、比較的バランスの取れた市場心理を示します。
恐怖と強欲指数が「極度の恐怖へ」
米CNNが算出する「恐怖と強欲指数(Fear & Greed Index)」は、3月10日に「14」をつけました。

出典:米国株相場、弱気シグナル相次ぐ トランプ関税で不透明感 - 日本経済新聞
2025年2月25日以降、5段階のリスク許容度で最も低い「極度の恐怖」水準(0〜25)が続いている状況です。
2024年11月の米大統領選の直後につけた「強欲」水準(55〜75)から大きく低下した格好です。
極端な恐怖の状態では、投資家が過度に心配しているフェーズに向かうケースもあり、今後は購入の好機に転換していく可能性もあります。
200日移動平均を下回った
多くの機関投資家が運用指標とする米S&P500種株価指数は、3月10日に5,614と、2月19日につけた最高値(6,144)と比べて9%安となりました。
2024年末比では5%安い値です。
直近の下落基調により、相場の長期トレンドを示す200日移動平均(5,734)を同日、2023年11月以来、1年4カ月ぶりに下回りました。

出典:米国株相場、弱気シグナル相次ぐ トランプ関税で不透明感 - 日本経済新聞
200日移動平均は当日を含めた過去200営業日の終値の平均値を算出したもので、約1年間の平均売買コストを示します。
移動平均線の近辺は、多くの投資家の損益分岐点が集中するため売買が交錯しやすいのが特徴です。
この水準を割り込むと含み損を抱える投資家が増え、損失拡大を防ぐための手じまい売りが出やすくなります。
フィラデルフィア半導体株指数(SOX)がデッドクロス
弱気シグナルは、半導体株指数にも表れました。
主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)のチャート上では、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けた際に指摘される「デッドクロス」が出現しました。

出典:米国株相場、弱気シグナル相次ぐ トランプ関税で不透明感 - 日本経済新聞
これは短期的な弱気相場入りを示しています。
こうしたことから、米国では「デスクロス(death cross、死の交差)」とも呼ばれています。
投資家が急速に弱気になった理由

投資家が急速に弱気に傾くのには複数の要因があります。
トランプ関税の影響
まずは「トランプ関税」への懸念です。
市場は当初、トランプ政権の関税政策に楽観的な見通しを持っていました。
関税方針はあくまで対象国との「ディール(取引)」の一環とみられ、株式への資金流入が続きました。
トランプ米大統領は2月27日、10%の追加関税を発動済みの中国に対してさらに10%を上乗せすると表明しました。
中国はその後報復関税に動きました。
米国がほかに関税を課すカナダとメキシコを含めて、貿易戦争による世界景気の下押し懸念が意識されたのです。
米連邦準備理事会(FRB)の研究者らが算出する「貿易政策不確実性指数」は、第1次トランプ政権時を上回る水準まで急上昇しました。
同指数は主要紙の記事に出てくる用語の頻度から、通商政策の先の読みにくさを指標化したものです。2月は過去最高の469.77と、米大統領選直前の24年10月(147.93)から3倍超に膨らみました。
昨秋以降、減税や規制緩和といったトランプ政策のポジティブな側面を先に織り込んだため、逆にその反動が大きくなっています。
トランプ不況!?
また、米FOXニュースが3月9日放送したトランプ氏のインタビューでトランプ米大統領が関税引き上げや政府支出の大幅削減に伴う景気後退の可能性を否定しなかったと受け止められ、市場参加者の不安心理が高まりました。
株価下落の引き金となったのです。
トランプ氏は、その上で足元の軟調な株価動向を注視するよりも、長期的に「強い国家をつくる」必要性を訴えました。
年内の景気後退入りの可能性を問われたトランプ氏は「この種の事柄を予測するのは好きでない。我々は非常に重要なことをやっているため『移行期間』が存在する。我々は米国に富を取り戻そうとしている。多少時間がかかる」と述べたのです。
明言は避けつつも、各種施策に伴って景気後退に陥る時期がありうることを示唆した格好です。
ベッセント財務長官も3月7日に出演した米CNBCの番組で経済に軟化の兆しがあると語っていました。
米市場では、トランプ氏と景気後退(リセッション)をあわせた造語「トランプセッション(トランプ不況)」が急速にはやり言葉になりつつあります。
3月9日のトランプ氏のインタビューを受け、S&P500種株価指数は2.7%安。
1日の下落率としては、米連邦準備理事会(FRB)が利下げペース鈍化を示唆して相場が急落した2024年12月18日(2.9%安)以来の大きさとなりました。
S&P500採用銘柄のうち下げているのは7割弱であり、全面安ではありません。
ただ、時価総額の大きいテクノロジー銘柄の下げが相場全体の下落を主導しています。
世界最大の時価総額を持つアップルは一時6%安と急落。
テクノロジー銘柄の比率が高いナスダック総合株価指数は同4.0%安で引け、22年9月13日以来、約2年半ぶりの下落率を記録しました。
調査会社BCAリサーチのチーフ米国投資ストラテジスト、ダグ・ピータ氏は3月10日付リポートで「米政府効率化省(DOGE)と関税が引き起こす不確実性が米経済を後退に追いやる」と指摘し、米株の投資判断を「アンダーウエート(売り推奨)」へ引き下げた。
ロイター通信が前週実施した、米国、カナダ、メキシコのエコノミスト74人を対象とする調査では、9割超に相当する70人が各国経済の後退局面入りリスクが高まったと回答。
出典:米国株相場、弱気シグナル相次ぐ トランプ関税で不透明感 - 日本経済新聞
関税引き上げなどトランプ政権の政策で北米経済の先行きに不透明感が強まっています。
経済指標の悪化
投資家心理が悪化したもう一つの要因が、消費者心理の悪化など、米景気の減速を警戒させる経済指標が相次いだことです。
代表的な小型株指数のラッセル2000は、3月10日に2019と24年末比で9%安となりました。
小型株は、米国内の売上高比率が比較的高くあります。
今後の先行きの見方は意見が分かれている

米国景気が堅調に推移し業績が拡大するというこれまでの前提が揺らいできました。
先日投稿した下の記事でもご紹介していますが、アメリカの株価指数は下落を続けています。
では、今後の先行きについて、市場関係者はどのように見ているのでしょうか。
以下のとおり、市場関係者の間では先行きの見方は分かれています。
下にあるように、「関税の全体像が明確になったら、市場が回復する機会が出てくる」との見方もあれば、「このまま下落基調が続く」との見方もあります。
BofA証券は2月28日付リポートで第1次政権を振り返り「市場の懸念は米国が関税を発表または課したときにピークに達し、その後緩和する傾向がある」と指摘した。「4月1日に米当局が貿易慣行の見直しを完了すれば関税の全体像がより明確になり、市場が回復するチャンスが生まれる」と予想する。
ピクテ・ジャパンの田中氏は「S&P500が200日移動平均を割り込んだ状態が続けば、調整色が深まるだろう」と話す。
トランプ関税を巡る政策の不透明性は増し続けている状況であることから、引き続き動向を注視していく必要がありますが、私個人としては、S&P500の投資信託を保有していますが、売却せず、引き続き毎月一定額買い増しを続けていきたいと思います。

S&P500は、リーマンショック直後の相場である約20年前と比べ、6倍以上になっています。
これは、企業の利益成長(1株当たり利益の成長)が、市場全体の価値を押し上げているからです。
このため、株価市場は、長期的に企業の利益成長に伴って上昇していくことを示しています。
S&P500でいえば、長期でならすと6~8%の成長を続けてることが見込まれます。
また、世界経済も長期的に成長しているため、株価市場は今後も拡大していくことでしょう。