国債と聞くと、皆さんがイメージするものとしては、何となく政府の借金で、日本の場合その発行残高が年々増加しているもの、金融商品としての国債は安定資産のイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
今回は知っているようで実は知られていない国債についてその概要を簡単にご紹介していきます。
国債とは?
企業や団体が銀行などから資金を借り入れたときに発行される借用証書の一種が債券です。
その中でも国が発行する債券のことを「国債」といいます。
なお、債券は発行される団体によって呼称が異なります。
例1
地方公共団体が発行する債券…地方債
例2
企業が発行する債券…社債
国が社会保障の整備や各種インフラ整備などの公共サービスを提供するときには、税金を充てるのが一般的です。
しかし、それらの経費を税収入で賄えなくなると、国は国債を発行して投資家からお金を募ることになります。
国の借金の申し出に賛同した投資家が国債を購入することで、国にお金が入る仕組みになっているのです。
「国債=国の借金」という捉え方が一般的なのは、国家と投資家の間にこのやり取りがあるからです。
「投資家が債権者」、「国家が債務者」という関係性と考えておくと良いかもしれません。
つまり、国債を購入するということは、国に一定期間お金を貸すということこと。
お金を貸しているわけですので、購入者には定期的に利子が支払われます。
そして満期になれば元本の返済を受けることが可能です。
政府が個人の方でも購入できるようにしたのが「個人向け国債」です。
お近くの銀行、証券会社などの金融機関で購入することができます。
投資の見返りに得られる利子の支払いは半年毎。
満期を迎えると最初に投資したお金(元本)が目減りすることなく戻ってくるので安心です。
繰り返しになりますが、国債を購入した投資家は、満期まで国債を保有しておくことで、最初期に投資した「元本」と「利子」を債務者である国から受け取れます。
例えば、固定10年(発行時適用利率が10年変動しないタイプ)という条件で100万円分の国債を購入すると、満期には元本の100万円に加えて利子となる5,000円を受け取ることができます。
ちなみに、利子の2,500円は満期に一括で受け取るのではなく、年2回、半年毎の受け取りで、税引き前の金額になります。(利率は0.05%で計算)
国債が発行される仕組み
先ほどご紹介しましたが、国は、財政支出の不足分を国債による収入で賄っています。
国は国債を通じて投資家からお金を借り入れ、その間、投資家に一定の利子を支払います。
満期になったら、借入金と利子を投資家へ償還します。
満期は国債の種類によって異なり、個人向け国債であれば10年債、5年債、3年債と別れているのが特徴です。
かつて、国債は用紙に券面を印刷して発券されていましたが、2003年1月から始まった「振替決済制度」によりペーパーレス化が進みました。
①同制度では国債を紙で発行しないこと、②売却や購入などの取引内容が口座情報に記録管理されることが法的に明確にされました。
したがって、国債の取引を行なった場合、専用の取引残高報告書で確認できます。
国債の利回り
利回りとは、投資金額に対する利益の割合のことです。
「投資金額に対するリターンの割合」と捉えると分かりやすいでしょう。
そこには利子も含まれており、期間は1年あたりで算出されます。
よく似た言葉に「利率」という言葉がありますが、利率は額面の金額に対し、毎年受け取れる利子の割合を指す言葉です。
「表面利率」とも呼ばれます。
利回りは、「収益の合計÷運用年数÷投資金額×100」という式で計算されます。
例えば100万円分の金融商品を購入、2年運用したとしましょう。
2年後に売却益と分配金の合計が4万円儲かると計算式は「4万円÷2年÷100万円×100」となり、利回りは「2%」ということが分かります。
100万円分の金融商品を5年運用して50万円の利益が得られた場合、「50万円÷5年÷100万円×100」という計算式になり、利回りは「10%」となります。
それでは、国債で例えてみましょう。
2015年に発行された額面100万円(国が100万円分の借金をして発行した債券、つまり元本100万円保証)の国債(利率1%(1万円)で年2回受け取り)を、2020年に100万1千円で購入し、1年運用して101万円で売却。
すなわち9千円の利益が得られた場合、「【売却益】9千円÷1年÷100万円×100」+「【利子】1万円÷1年÷100万円×100」という計算式になり、利回りは「1.9%」となります。
なお、国債は国家が発行元となっているため、安定した利回りで運用できるのが特徴です。
国家が破綻しない限り、満期日には必ずリターンの恩恵が受けられます。
その反面、利回り自体は低めであるため、大きなリターンを期待している方には向かないのがネックです。
国債価格に影響を与える主な要因としては、各国中央銀行の金融政策や各国内における資金需要の変動が挙げられます。
例えば日本銀行が金融緩和策として利下げを行ったり、日本国内の企業や個人の資金需要が低下すると、それらに呼応して日本の市中金利も低下します。
国債の金利はおおむね市中金利に連動して決まるため、新規発行される日本国債の表面利率も低下します。
市中金利が低下するなかで、同じ年限の国債が2カ月連続して発行されたと仮定しましょう。
新規発行された国債Aの表面利率が0.5%で、1カ月前に発行された国債Bが1.0%だった場合、投資家の立場から2つを比べると既発債である国債Bの方が金利面で有利なため、相対的な魅力の高さから購入が増えて国債Bの価格が上昇します。
国債は購入時期にかかわらず、償還時に戻ってくる元本相当分の金額(額面金額)は変わりません。
そのため、国債Bを価格上昇後に購入した投資家は、満期償還まで持ち切ると価格面で差損が発生し、同じ国債Bを新規発行時に額面金額で購入した投資家よりも利回りが低下することになります。
すなわち、国債に関しては、「市中金利がこれまでより低下→新規発行される国債の表面利率がこれまでより低下→既発の国債価格が上昇→既発の国債利回りが低下」という図式が成り立つわけです。
反対に市中金利が上昇する局面では、まったく逆の図式となります。
国債利回りが低下する要因として、上記以外にも中央銀行による国債の大量購入や運用難による国債そのものの人気化などが考えられます。
日銀は2013年以降、異次元金融緩和の一環として年間80兆円を目標に市場から国債を買い入れてきました。
結果として市場全体に占める日銀の国債保有シェアは4割超となっており、こうした日銀による買い占めがマイナス金利など、国債の極端な利回り低下に少なからず影響を及ぼしていることは否めません。
オーストリアが17年に発行した100年国債の表面利率は2.1%でしたが、同国が19年6月に追加で100年国債を発行した際に利率は1.2%台まで低下していました。
世界的な運用難で多くの投資家が少しでも高い利回りの追求に躍起となるなか、100年国債に人気が集中して以前より低い利率でも買い手がついた格好です。
ちなみに日本には100年国債は存在しません。
現状、日本で発行されている固定金利型の国債を年限で種類分けすると、償還期限が1年以内の国庫短期証券(割引国債)、満期が2年および5年の中期国債、10年の長期国債、20年・30年・40年の超長期国債があります。
いずれも流通市場で売買されています。
一般個人が投資できる国債のひとつ「個人向け国債」は、償還期限が短めな国債が多く設定されています。
満期が3年・5年の固定金利型に加えて、10年の変動金利型も用意されており、購入から1年が経過すれば国が額面で買い取ってくれます。
中途解約にあたって価格変動を気にする必要のない、事実上の元本保証商品です。
国債価格と利率の関係については、以下の記事でご紹介していますので、合わせてご覧ください。
国債の種類
国債といっても、その種類はさまざまです。
個人で購入できる「個人向け国債」や、固定利付国債や変動利付国債など、日本国債における種類別の特徴をまとめてご紹介します。
固定利付国債(こていりつきこくさい)
発行時の金利があらかじめ決まっており、その金利が満期まで変動しない仕組みを持つ国債の総称。
2年、5年、10年、20年、30年、40年満期の国債、3年と5年満期の個人向け国債が固定利付国債のうちに入ります。
半年に1度利息を受け取ることができます。
変動利付国債(へんどうりつきこくさい)
半年に一度、利息を受け取れる意味では、固定金利利付国債と同じですが、利息が金利水準に合わせて値動きするのが「変動利付国債」です。
満期15年の変動利付国債をはじめ、10年変動型の個人向け国債や、物価連動国債などが「変動利付国債」に分類されます。
個人向け国債(こじんむけこくさい)
個人向けに発行される国債で、法人は購入できません。
3・5年の固定金利型、10年の変動金利型という種類があり、適用利率も期間によって異なります。
1万円からの購入が可能で、安全性も高いため個人投資に適しています。
また、最低でも0.05%の金利が保証されています。
新窓販国債(しんまどはんこくさい)
新窓販国債とは、新型窓口販売方式によって販売されている国債のこと。
個人向け国債と並び、個人でも購入しやすい国債のひとつです。従来は郵便局や金融機関を経由した民間窓口販売だったところへ変更が加えられ、新しい窓口販売で発行されるようになったのが「新窓販国債」です。満期設定は主に10年となっており、最低5万円から購入できます。
個人はもちろん団体・法人での購入も可能なのも魅力です。(金利水準によっては発行されない場合もあります。)
売却する際は金融機関を通し、その時の市場価格に沿った金額で売却することになります。
場合によっては、売却価格が投資金額を下回り、売却損になることもあるため要注意です。
復興応援国債(ふっこうおうえんこくさい)
東日本大震災からの復興を応援する意図のもと発行された国債です。
10年変動金利型の個人向け国債を骨組みに条件が設定されており、金利は固定で0.05%となっています。
発行された当初は0.05%の金利という条件で、復興事業資金を募っていました。
発行から3年経過時点で、100万円分以上の復興応援国債を所持している投資家へは、平成27年度に発行された「東日本大震災復興事業記念貨幣」が贈呈されていました。
募集は2012年(平成24年)12月までとなっており、現在は募集しておりません。
物価連動国債(ぶっかれんどうこくさい)
物価動向によって元本が変わる国債を指します。
利率自体は満期まで変わらないものの、物価によっては元本そのものが物価によって左右されるため、利息が増減するのが特徴です。
国債のメリット
国債を購入する際、どのようなメリットや強みがあるのか気になっている方は多いでしょう。ここでは、国債を購入するメリットを紹介します。
①安全性が高い
国債は、国家から発行されているため、ほかの金融商品と比べると圧倒的に安全性が高いのが特徴です。
ここでいう安全性とは、元本割れリスクの有無を指します。
元本割れとは、金融商品の価格が変動してしまい、投資金額(元手)を下回ってしまうこと。
例えば10万円分の金融商品を購入した後、その金融商品が値動きによって10万円を下回ってしまうと、満期に受け取れるリターンも10万円以下となります。
株式投資は値動きが激しいため、元本割れして損失を被るリスクが高いといえます。
国債は国家が財政破綻しない限り、償還まで保有したら元本割れすることはありませんが、中途売却すると元本割れする可能性がありますので注意が必要です。
国債が値動きする可能性はありますが、株やFXと比べると、その変動幅は非常に小さいのが特徴です。
②少額投資が可能
個人向け国債は最低で1万円から購入でき、投資のハードルが低めなのも魅力です。
③定期預金と比べると金利が高い
個人向け国債の金利は0.05%(2021年6月時点)。
対する定期預金の金利は、メガバンクであっても0.01%ほどで、国債の金利の高さが分かります。
したがって、銀行へ預金するよりも、国債を購入した方が高い金利で資産運用できるのが魅力です。
また、個人向け国債は、最低でも0.05%の金利が保証されています。
④毎月売り出されている
個人向け国債は毎月売り出され、翌月には発行されます。
「購入するのに数ヶ月間待たなければならない」ということもありません。
⑤譲渡・相続が可能
個人向け国債は、有価証券として譲渡・相続することが可能です。
譲渡・相続は1万円から可能で、もし、保有者が死亡した場合は相続人の口座に移管できるのも特徴。
ただし、あくまでも個人向け国債であるため、譲渡・相続も個人間でのみ可能となります。
国債のデメリット
国債にはさまざまなメリットがある反面、デメリットもあります。
①すぐに換金できない
個人向け国債は途中解約できるのが1年以降となり、すぐに換金できるわけではありません。
②途中解約するとリターンも小さくなる
国債は購入から1年すると途中解約できます。
ただし、途中解約すると「中途換金調整額」の名目で「直前2回分の利子×0.79685」分の金額が差し引かれてしまい、得られるリターンが小さくなってしまいます。
③収益性はあまり高くない
国債は元本割れのリスクが低く安全性が高い反面、投資信託などと比べると低金利です。
例えば、100万円分の国債を購入しても、現在の国債の金利0.05%に従って計算すると、1年の利息は500円(税引前)となります。
大きなリターンは期待できず、収益性は高いとは言えません。