新型コロナウイルスの感染が中国・アジアに留まらず、欧米にも拡大しました。
世界中で一斉に自粛ムードが広がり、不用意な外出の自粛、交通遮断、イベント中止による消費停滞が起こっています。
世界が同時多発的に消費が凍結する事態は、2008年のリーマン・ショックのときに似ています。
今回は、リーマン・ショックの再来、もしくはそれ以上と呼ばれる世界同時株安の現状において、今後のダウ平均や日経平均株価はどうなるのか考えていきたいと思います。
米FRBが利下げを実施しても逆イールドが発生!
新型コロナウイルス感染拡大による景気不安を受け、3月8日、FRB(米連邦準備制度理事会)は、緊急利下げを実施しました。
短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、1.50~1.75%から、1~1.25%へ0.5%引き下げました。
さらに米連邦準備理事会(FRB)は15日、緊急の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開いて1.0%の大幅利下げに踏み切りました。
政策金利は0~0.25%となり、2008年のリーマン・ショック以来のゼロ金利政策を敷いています。
米国債などを大量に購入する量的緩和政策も復活させました。
15日のFOMCでは、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、1.00~1.25%から0~0.25%に引き下げたのです。
パウエル議長は「米国債などいくつかの市場で、資金の流動性に強いストレスがあった」と述べ、金融市場での資金の逼迫を強く警戒して緊急利下げに踏み切ったと明らかにしました。
すると、逆イールドの現象が解消し、株価は上昇に向かいました。
出所)【図解・国際】米政策金利の推移:時事ドットコム
1回目の利下げでは米国株は下げ止まらず、2回目の利下げ後に下落は一旦落ち着き、反発する動きを見せています。
利下げは、通常、株にとって支援材料です。
1回目の利下げは、米景気不安が強まっていることを追認するだけの効果しかありませんでした。
しかし、2回目の利下げでその効果を発揮しました。
1回目の利下げで株価が下げ止まらなかった理由は、米「長短期金利の逆転」が解消しないことから、株式市場に評価される内容とはならなかったことが考えられます。
この長短金利の逆転を「逆イールド」といいます。
長短金利の逆転とは?逆イールドとは?
長短金利の逆転を「逆イールド」と呼ぶことをご紹介しました。
では長短金利の逆転とは、どういった現象のことを言うのでしょうか。
一般的に、金利は保有期間が長くなるほど高くつくことになります。
保有期間が長ければその分リスクが高まるからです。
したがって、債券金利は短期債ほど低く、期間が長い長期債ほど高くなる「順イールド」が一般的です。
ここで、長短の金利が逆転する状態を「逆イールド」といいます。
景気後退懸念が大きいときに、安全資産とされる長期債が買われ長期債利回りが大きく低下することで発生します。
金融市場では特に、2年債と10年債の利回りの差 (スプレッド) を最重視しています。
FRBは、3月8日に1回目の利下げとして、短期金利の指標の一つフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、1.50~1.75%から、1~1.25%へ0.5%引き下げました。
それでも、10年債の利回りがFF金利よりも低い状態が何度か発生したことで、このとき逆イールドが発生しました。
株式市場は、この逆イールドに嫌気をさし、株価が下げ止まらなかったといえます。
2回目の利下げにより、短期金利の指標であるFF金利が低下し、ようやく長期債の利回りを上回りました。
NYダウ平均の推移(12月1日~4月9日)
出所)https://jp.tradingview.com/symbols/DJ-DJI/
長短金利逆転(短期金利が長期金利よりも高くなること)は、米国で「景気後退の前触れ」と考えられています。
長短金利逆転は、景気後退懸念が大きいときに、安全資産とされる長期債が買われ長期債利回りが大きく低下することで発生するからです。
実際、過去、長短金利が逆転した後、米景気は後退に至ることが多かったと言えます。
2006~2007年も長短金利逆転が続いた後、2008年のリーマン・ショックにつながったのです。
今回、2019年5月、長期金利の低下により、FF金利(短期金利)が長期金利を上回りました。米FRBは利下げを続けましたが、長期金利の低下の方が速く、なかなか長短金利逆転は、解消しませんでした。
3月3日に0.5%緊急利下げしても、まだ解消しなかったのです。
そこで、FRBはさらなる利下げが必要であると考え、F2回目の利下げに踏み切りました。
円高が長引くが長期的に見れば株は買い!?
米金利の急低下を受け、為替市場で、ドル安(円高)が進んでいることが、日本株にとって追加の悪材料となっています。
3月7日には、1ドル105.36円まで円高が進みました。
米長期金利は1%割れ、日米長期金利差も1%を割れています。
これが一時的ならば、問題ありません。
もし米長期金利の1%割れが定着するならば、ドル/円の評価は、過去の傾向から100~103円あたりが妥当となってきます。
つまり、今後も円高が進むリスクがあることになります。
私は、新型コロナウイルスによる世界景気の悪化は長い目で見て、一時的と考えています。
2回目のFRBの利下げにより、逆イールド現象は解消し、株価も上昇に転じました。
ただし、米長期金利の低下は、構造的かもしれません。
つまり、新型コロナウイルス不安が去っても、米長期金利は2%まで戻らないかもしれないと考え始めています。
ドル円は、円高の状態が続くと見ています。
円高は日経平均株価にとって悪材料です。
日経平均株価が大きく上昇することは考えづらい状況です。日経平均株価がまた以前の24,000円台をつけることはかなり厳しいでしょう。
とはいうものの私は、日本株は配当利回りや買収価値から見て割安といえる水準です。新型コロナショックが長引けば、短期的にさらなる下値もありますが、長期投資で考えた場合、良い「買い場」と判断しています。