KDDIはこれまで、持続的な利益成長と株主還元強化を掲げ、顧客の期待を超える「お客さま体験価値」を提供するビジネスへの変革の推進により、強固な顧客基盤を確立し、着実に成長してきました。
今後は、5Gをはじめとした技術の進展により本格的なデジタル化が進むほか、競争環境の大きな変化が見込まれます。
KDDIは、このような時代の変化に対応し、KDDIの目指す「通信とライフデザインの融合」を実現するために、次の3ヵ年に向けた「新中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期)」を策定しました。
今回は、KDDIが策定した、「新中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期)」についてご紹介し、今後のKDDIの成長性について考察していきたいと思います。
- 事業セグメントを変更しました
- KDDIが掲げる事業戦略
- ①5G時代に向けたイノベーションの創出
- ②通信とライフデザインの融合
- ③グローバル事業のさらなる拡大
- ④ビッグデータの活用
- ⑤金融事業の拡大
- ⑥グループとしての成長
- ⑦サステナビリティ
- 財務目標
事業セグメントを変更しました
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
KDDIは、従来のパーソナル、ライフデザイン、ビジネス、グローバルの4セグメントを、個人向けのパーソナルと、法人向けのビジネスの2セグメントに集約、グローバル事業を国内事業の延長の位置づけに変更しました。
KDDIが掲げる事業戦略
KDDIは、以下7つの事業戦略に沿って、持続的な成長を実現するとしています。
①5G時代に向けたイノベーションの創出
②通信とライフデザインの融合
③グローバル事業のさらなる拡大
④ビッグデータの活用
⑤金融事業の拡大
⑥グループとしての成長
⑦サステナビリティ
以下それぞれの事業戦略について見ていきます。
①5G時代に向けたイノベーションの創出
5Gは大容量、低遅延、多接続の特性から、さまざまな分野への活用が期待されています。
KDDIは、パートナー企業と共に、5Gを活用してイノベーションを創出し、新たなプラットフォームの構築を進めていく戦略です。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
KDDIは、トヨタ自動車ともつながりがあります。
KDDIの株の約3割はトヨタ自動車が保有しています。
5GのKDDIと自動運転のトヨタ自動車が連携したら面白いことになりそうです。
また、地方創生への5G活用も積極的な事業機会と捉えており、地方自治体やベンチャー企業と共に、5Gを活用したデジタルトランスフォーメーションを推進していく計画です。
さらなる地域課題の解決と地方創生に向けて、全国の63自治体と5G利活用を見据えた地域連携協定しました。
2019年4月には、30億円の「地方創生ファンド」を設立しています。
地方のベンチャー企業と5Gを活用したデジタルトランスフォーメーションの推進を通じて、SDGsに貢献していくとしています。
②通信とライフデザインの融合
個人向けには、スマートフォンを起点に顧客にワクワクする体験をご提案し、ライフデザインサービスの事業拡大を目指すとしています。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
具体的には、通信だけでなく、ライフデザインサービスとのバンドルでリカーリングサービスを加速させ、ライフタイムバリューを最大化、総合ARPA収入の成長させることを目指しています。
ARPAとは、Average Revenue per Accountの略称です。モバイル契約者(プリペイド/MVNO除く)1人当たりの月間売上高であり、au通信ARPAは、1人当たりの通信料収入、付加価値ARPAは1人当たりの付加価値収入を示します。
成長領域であるライフデザイン領域で、主にコマース、エネルギー、金融でARPA成長を伴った売上拡大を目指し、2022年3月期に売上高として1.5兆円を目指すとしています。
出所)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
ライフタイムバリューを最大化するためには、モバイルだけではなく、固定通信・ライフデザインサービスをバンドルすることで総合ARPAを上げることが重要です。
また複数サービスのバンドル効果により解約率を下げ、エンゲージメントの深化と顧客基盤の拡大を狙っています。
法人向けには、本業貢献をキーワードに、企業と共に新たなビジネスモデルを構築し、法人顧客のDX推進をサポートする計画です。
両者ともに通信を核として、事業規模を拡大が見込まれます。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
KDDIとパートナー企業のプラットフォームをベースにビジネスを創出し、リカーリングビジネスを通じて顧客のデジタルトランスフォーメーション推進をサポート、2022年3月期までにIoT累計回線数を1,800万回線に拡大、売上高として1兆円を目指すとしています。
③グローバル事業のさらなる拡大
グローバルコンシューマとグローバルICTをそれぞれパーソナルセグメント、ビジネスセグメントに組み込むことで、国内で培った事業ノウハウを海外で生かし、グローバルでも国内と同等の経済圏創出を目指すとしています。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
またグローバル通信プラットフォームを応用、発展させたKDDI「IoT世界基盤」をベースにグローバルパートナーと共に、法人顧客のビジネスをサポートをしていく狙いです。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
④ビッグデータの活用
個人向けには、オンラインとオフラインのデータ連動により「お客さまに最適なモノ・サービスの提案」を全力で推進していくとしています。
法人向けには、現実空間から収集したビッグデータをサイバー空間上のAIが分析することで現実世界を可視化、パートナー企業との連携により周辺ビジネスを拡大する狙いです。
⑤金融事業の拡大
2019年2月に発表したスマートマネー構想を軸とし、au PAYをベースにしながら、生活の中心となったスマートフォンを通じて、顧客の日常生活における決済、金融サービスをより身近にする狙いです。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
また金融事業を強化するためにホールディング会社を設立、会社名もauブランドに統一し、金融事業を本格化させる計画です。
⑥グループとしての成長
KDDIの基本方針は、グループ会社に当社のアセットを最大限に活用してもらい、それらの会社が成長することを第一優先としています。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
その結果、KDDIグループ全体での持続的成長を目指す狙いです。
⑦サステナビリティ
KDDIは、社会の持続的な成長に貢献するため全社でサステナビリティ活動※1を推進しています。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
中期経営計画では「KDDIが目指すSDGs 」を策定しました。
通信、グローバル、地方創生、教育、金融などの事業戦略に連動する目標と、人財育成、女性活躍推進、人権・D&I ※2、地球環境などの企業活動に連動する目標の達成に向けて社会課題の解決に取り組むことで、社会とともに持続的な成長を目指すとしています。
こうした事業戦略は、ESG投資にも好影響を及ぼすことが予想できます。
※1「Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)」の略で、2015年9月に国連サミットで採択された国際目標
※2 ダイバーシティ&インクルージョン
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
財務目標
持続的な利益成長と、より一層の株主還元強化により、2025年3月期にEPS1.5倍 (19年3月期比) を目指すとしています。
また、2022年3月期において、ライフデザイン領域での売上高は1.5兆円、新ビジネスセグメントでの売上高は1兆円を目指し、併せてコスト削減等により、1,000億円規模の利益の創出を目指すとしています。
出典)中期経営計画 (2020年3月期~2022年3月期の3ヵ年計画) | 経営方針 | KDDI株式会社
株主還元については、配当性向を「40%超」へ着実に引き上げるとともに、機動的な自己株式取得を実施します。
なお、取得した全ての自己株式は消却を行います。
KDDIは、「持続的な利益成長と株主還元強化の両立」を目指しており、将来的にも安定した成長が期待できるでしょう。