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世界を変える!日本企業が約3441倍の性能の半導体を開発!

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最近、新たな半導体の技術を日本の研究チームとベンチャー企業が開発しました。

その名も酸化ガリウム半導体です。

この酸化ガリウム半導体ですが、従来の半導体の約3444倍の性能を誇っているのだそうです。

半導体は、パソコンやスマホなどはもちろん、エアコンの温度センサーや、炊飯器の火力調節、洗濯機、LED電球などがありとあらゆるデジタル家電に使用されています。

つまり、全ての電化製品の性能を格段に向上させる技術を開発したのです。

この酸化ガリウム半導体がどれほどすごいものなのか理解する上で必要となる、前提知識からご紹介していきます。

それを踏まえて、この半導体を開発し実用化に乗り出そうとしている注目すべき企業をご紹介していきます。

 

そもそも半導体とは何もの?

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そもそも半導体とはどのようなものなのかをご紹介していきます。

物質には電気を通すものと通さないものがあります。

例えば、プラスチックやゴムは電気を通しません。逆にアルミニウムや銅は電気を通します。

このように電気を通す物質を「導体」、電気を通さない物質を「絶縁体」と呼びます。

導体と絶縁体の違いは、抵抗率の違いにあります。導体は抵抗率が低く、絶縁体は抵抗率が高いです。

半導体は、温度によって抵抗率が変化します。半導体は。温度が低い時は電気を通しにくく、温度が高くなるにつれて電気を通しやすくなるのです。

この性能は、電化製品のコントロールに欠かせないものとなっています。

パソコンやスマホなどはもちろん、エアコンの温度センサーや、電子レンジや炊飯器、洗濯機、LED電球などがありとあらゆるデジタル家電に使用されています。

半導体なしでは日常生活が成り立たないと言っても過言ではありません。

では、この半導体に使われている物質にはどのようなものがあるのでしょうか。

半導体には単一の元素でできている「元素半導体」と複数の元素でできている「化合物半導体」の2種類があります。

元素半導体には、よく知られているの「シリコン」があります。

シリコンは、「ケイ素」と呼ばれる元素で、地球上の様々なものに含まれている状態で存在します。

地球上に存在するほとんどのシリコンは、他の元素と結びついているため、半導体として使用するにはシリコンのみを摘出する必要があります。

この抽出には高い技術が必要ですし、多くの電力が必要なのだそうです。

一方、化合物半導体は様々な元素の組み合わせによって作られ、組み合わせにより異なった性質を持ちます。

化合物半導体は、シリコンに比べ結晶が壊れやすいこと、コストがかかることから以前は一般家電にはあまり使用されていませんでした。

しかし、シリコンよりも電子の移動速度が速いなど優れた性能が注目され、最近開発が進んでいます。

なかでも注目されているものが、「炭化ケイ素」「窒化ガリウム」です。

例えば、電車に使用されている半導体をシリコンから炭化ケイ素に変えたところ、最大40%もの省エネに成功したことが分かりました。

このように半導体は電化製品に欠かせないものであり、半導体の性能が電化製品の機密性にも大きな影響を及ぼします。

 

超高性能半導体、酸化ガリウム半導体とは?

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そんな中世界を変えてしまうようなものすごい半導体の開発に日本が成功したというニュースが世界を席巻しました。

日本が開発した酸化ガリウム半導体は、これまで多くの人達が開発に尽力してきた炭化ケイ素や窒化ガリウムの功績を一瞬で無にしてしまうほどの性能を誇るのだそうです。

この酸化ガリウムは、もともとLED基板や深紫外線受光素子としての用途を想定して開発されていたものでした。

電化製品に使用するパワー半導体としての研究が始まったのは、2010年頃のことです。

この研究は、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)の東脇正高氏、京都大学の藤田静雄教授、タムラ製作所の倉又朗人氏の3名から始まったとされています。

酸化ガリウム半導体は、もともと日本からはじまった研究というわけです。

 

酸化ガリウムのメリット➀ 高性能・省エネ

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シリコンに対し、半導体の性能がそれだけ優れているのかを表す数値にバリガ性能指数というものがあります。

この数値を用いて表すと、シリコン1に対し、炭化ケイ素は30、窒化ガリウムは870となります。

これだけでもいかに炭化ケイ素や窒化ガリウムの性能が優れているのかが分かります。

ところが、酸化ガリウムはなんと3444という圧倒的高性能を誇ります。

このバリガ性能指数の値は、大きければ大きいほど電力損失が小さくなることことを示しています。

つまり酸化ガリウムは、高性能かつ圧倒的な省エネが見込めるわけです。

 

酸化ガリウムのメリット➁ サイズを小型化できる

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半導体の性能が高いということは、他の半導体と同じ大きさで、より高い性能を見込めることになります。

ということは、半導体のサイズをより小さくすることが可能なのです。

現在、半導体市場は、スマホやパソコンなどの使用に際し、より小型化したものを開発しようと競争が激化しています。

そんな中酸化ガリウム半導体が実用化されれば、一気に小型化が進むことになるでしょう。

 

酸化ガリウムのメリット③ コストが抑えられる

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高性能ゆえにその分、コストもかさむのではないかと思われることでしょう。

しかし、なんと酸化ガリウムは、これだけの高性能を誇りながら、コストをシリコンと同等に抑えられる可能性があるのです。

炭化ケイ素や窒化ガリウムは、シリコンよりも高性能ではあるものの、コストがかかるのが欠点と言われています。そのため、まだ一般家電に普及するまでには至っていません。

一方、酸化ガリウムは、コストを抑えて製造する方法が見つかっていることから、シリコンと同等のコストで製造できる可能性があるのです。

その方法の一つが、京都大学のベンチャー企業「フロスフィア」が開発した「ミストドライ法」です。

 

前述でシリコンを抽出するには、多くの電力と高い技術が必要であることをご紹介しました。

しかし、このミストドライ法は、ある特殊な液体に酸化ガリウムを溶かし、サファイア基板に吹き付けて、再び結晶化するだけなので、簡単にできるため、コストが抑えられると考えられてます。

この他にも、さらに高品質な結晶を作ることが可能な方法が開発されています。

NICTとタムラ製作所が中心のベンチャー企業「ノベルクリスタルテクノロジー」によれば、シリコンよりもさらに低価格になる製造方法を開発しているとしています。

将来的にはシリコンの価格の3分の1ほどにできるとしています。

 

世界初!?2021年に量産体制へ

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先ほどご紹介した国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)の東脇正高氏、京都大学の藤田静雄教授、タムラ製作所の研究チームは、NICTとタムラ製作所が中心の「ノベルクリスタルテクノロジー」と、京都大学が中心の「フロスフィア」の2つのベンチャー企業を生み出し、酸化ガリウム半導体の開発をけん引してきました。

今では、世界中がこの酸化ガリウム半導体に注目し、開発競争が激化していますが、依然として日本が酸化ガリウム半導体の研究を牽引しています。

そして、ついにノベルクリスタルテクノロジーが2021年、酸化ガリウム半導体の量産体制に入ると発表しました。

しかも、現在主流のシリコン製のものよりも、さらに安価になる見込みだと発表しています。

京都大学の「フロスフィア」もミストドライ法による製品化に成功しているそうです。

現在、量産体制を急いでおり、2020年には量産を開発したいとしています。

とはいえ、うかうかしていられるわけではありません。

現在、アメリカでも酸化ガリウムの開発が盛んになってきています。

ノースロップ・グラマンの子会社シノプティクスでは、すでに単結晶酸化ガリウム基板の販売に乗り出しているそうです。

各国で酸化ガリウム半導体の研究は増えており、研究論文の数も急上昇しています。

スピード感をもって取り組む必要が出てきています。

 

www.novelcrystal.co.jp

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