化学繊維業界で大手である東レ。
衣料や産業用途の繊維事業が大黒柱の会社です。炭素繊維複合材ではなんと世界トップのシェアを誇る大企業です。
そんな東レは、配当利回りも良く3%を超えています。
今回は、そんな優良企業かつ高配当銘柄である東レについてご紹介していきます。
東レの株価状況
株価(4/10 15:00)
465
年初来高値
769.9 (2020/01/20)
年初来安値
397.4 (2020/03/19)
最高値(過去10年)
1,208.0(2017/11/8)
最安値(過去10年)
397.4 (2020/03/19)
PER:9.38倍
PBR:0.62倍
配当金(会社予想):16円
配当利回り:3.43%
配当性向:32.3%
配当権利確定日:3月末、9月末
自己資本比率:40.6%
ROE:6.2%
ROA:2.6%
EPS:49.6円
東レの財務状況
自己資本比率:40.6%
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
自己資本比率は、自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)で算出します。
自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、倒産するリスクが高まります。
一方で自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。
自己資本比率は会社経営の安定性を表す数値であり、高いほどよいのです。
では自己資本比率がどのくらいなら倒産しない会社といえるでしょうか。
一般に自己資本比率が70%以上なら理想企業ならまずつぶれません。
40%以上なら倒産しにくい企業といえます。
東レは、自己資本比率40%を超えており、潰れるリスクが低い優良企業といえます。
ROE:6.2%
ROEは、10~20%程度であれば優良企業であると判断されます。
自己資本利益率(ROE:Return on Equity)とは、自己資本(純資産)に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の指標です。
自己資本とは、株主からの出資金と事業活動から得た利益の蓄積を表しています。
ROE(自己資本利益率)は、企業が自己資本をいかに効率的に運用して利益を生み出したかを表す指標です。
株主の立場から見ると、自己資本利益率が高い会社は「自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社」であると見ることができます。
東レは、株主から集めたお金と事業活動から得たお金をどれだけ有効活用しているか示すROEが6.2%です。
ROEはもう一踏ん張りといった状況です。
東レは化学素材メーカーであることから、研究開発に対する投資の割合が高くなっています。
株主から集めたお金と事業活動から得たお金の多くを研究開発に充てている状況です。
ROA:2.6%
ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ROA(総資産利益率:Return On Assets)とは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す、財務分析の収益性の指標です。
純資産(自己資本)、負債(他人資本)を含めた、すべての資本をいかに効率的に運用できているかを表す情報とも言えます。
一般的に、ROAが5%が超えていると優良企業であると判断されます。
ただし、業種によって基準が変わってくるため、ROAを分析する際は同業種の水準と比較することが大切です。
東レはROAが2.6%です。ROEと同じくもう一踏ん張りです。
EPS:49.6円
EPS:Earnings Per Share(1株当たり利益)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、1株に対して当期純利益がいくらあるのかを表す指標です。
「1株利益」「1株あたり当期純利益」と呼ばれることもあります。
EPSとは、成長性を見る指標です。EPSの推移を見るようにしましょう。
順調にEPSが増えていれば、成長性のある企業であると言えます。
EPSは、会社の規模にかかわらず1株あたりの当期利益の大きさを表しているため、値が大きいほど良いとされます。
順調にEPSが増えている企業は、安定的に収益をあげ、しかも成長中の企業なので、投資先として検討しましょう。
以下は東レのEPSの推移を示した表です。
2017年をピークにEPSは減少傾向にありましたが、2020年のEPSは、上昇する予想となっています。
PER:9.38倍
株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)とは、財務分析で企業の成長性を分析するときに利用する指標の一つであり、株価が1株ごとの当期純利益の何倍まで買われているかを表すものです。
PER(倍) = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安であり、高いほど株価は割高だと判断できます。
PERは会社の利益を基準に判断し、PBRは会社の資産を基準に判断されます。
PER15倍以下なら割安と言われていますので、現在の東レの株価は、かなり割安だといえます。
PERは、9.38倍です。10倍を下回る水準は割安だといえます。
PBR:0.62倍
PBR:Price Book-Value Ratio(株価純資産倍率)とは、財務分析で企業の成長性を分析するの指標の一つであり、会社の純資産に対して株価が適当な水準であるのかを表す指標です。
PBR(株価純資産倍率)は、1株あたりの純資産に対して、何倍の株価で株が買われているかを表しています。PBRを見れば、会社の資産に対して株価が高いか安いかを判断できます。
PBRの目安は1倍以下です。
一般的な目安として、PBR(株価純資産倍率)が1倍以上なら割高で、1倍を割るようであれば割安であると考えられています。
PBRが1倍ということは、株価とBPS(1株あたり純資産)が等しいということであり、その投資段階で会社が解散した場合、株主には投資額がそのまま戻ってくるということを表しています。
PER同様、PBRも東レは、かなり低い値です。
株価指標の読み方については、以下の記事で解説していますので、是非ご覧ください。
東レの株価推移
10年チャート 株価(4/10 15:00)465円
出所)東レ(株)【3402】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス
1年チャート 株価(4/10 15:00)465円
出所)東レ(株)【3402】:リアルタイム株価チャート - Yahoo!ファイナンス
今回の新型コロナウィルスの影響で株価が一気に300円近く下げ、一時300円台に突入しまにた。
もっとも下げた時には、2019年の800円の半額である、400円となり大きく値を下げました。
しかし、その後は、若干持ち直しましたが300円台で推移しています。
東レの事業内容
東レグループは5つのセグメントで構成されています。
東レの5つのセグメントの「繊維」「機能化成品」「炭素繊維複合材料」「環境・エンジニアリング」「ライフサイエンス」は以下のように分類されます。
東レの当期純利益の推移
2017年に最高益を更新しましたが、その期を境に業績は下落を続けています。
2020年は前年の2019年の当期純利益を下回る予想となっています。
新型コロナウィルスの影響を向い風となり難しい状況でしょう。
2011年:579億円
2012年:642億円
2013年:484億円
2014年:596億円
2015年:710億円
2016年:901億円
2017年:994億円
2018年:959億円
2019年:793億円
2020年(予想):720億円
2017年時点では994億円の当期純利益を出したものの、2019年には793億円となり、下落基調となっています。
2018年に大きく下落した理由の一つは炭素繊維事業の不振です。
原材料費の高騰などによって炭素繊維の利益率が急激に低下しました。
米中貿易摩擦をきっかけとした中国景気の減速が繊維や樹脂などの販売の逆風になっていることが影響しています。
昨年の2019年は、繊維事業において暖冬の影響で顧客の衣料品の売り上げが伸び悩み、東レが展開する縫製品の売り上げも落ち込んでいます。
スマートフォン向けの素材も落ち込んでいます。
炭素繊維複合材料事業は航空機向けの出荷時期がずれこむほか、欧州で高級自動車向けが振るわない状況です。
東レの業績と今後について
先ほどご紹介しましたが、2018年に大きく下落した理由の一つは炭素繊維事業の不振です。
原材料費の高騰などによって炭素繊維の利益率が急激に低下しました。
2019年では衣料用途は天候不順の影響もあり、販売が伸び悩みました。
中国景気の減速などで繊維や樹脂の事業が振るわない状況です。
衣料向けの素材やスマホ関連部材、リチウムイオン電池向け絶縁材も落ち込んでいます。
中国の景気減速の影響が業績に如実に表れており、しばらく事業環境が悪化した状況が続くでしょう。
炭素繊維事業にも暗雲が立ち込めています。
炭素繊維の原材料費の高騰は縮小してきましたが、ボーイングが、昨年11月に「ボーイング787」の生産ペースを20年後半から同12機に減らすと発表しました。
同機の主要構造部材に使われる炭素繊維のほとんどを供給する東レにも影響が出るかもしれません。
化学素材メーカーは全体的に伸び悩む状況が続いています。
東レだけでなく、同業他社である三菱ケミカルHDなども厳しい状況です。
ただし、悪いニュースばかりではありません。
東レは、商品の在庫管理に使うICタグを従来の5分の1程度で生産できる技術を開発しました。
あらゆる業界のビジネスを変えうる画期的な技術として注目されています。
この技術がどれほど画期的なものなのか以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。
東レの配当金の推移
東レの配当金は、現在は1株当たり16円と高配当を続けています。また、ここ10年増配し続けています。
2011年:7.5円
2012年:10円
2013年:10円
2014年:10円
2015年:11円
2016年:13円
2017年:14円
2018年:15円
2019年:16円
2020年:16 円(予想)
増配トレンドを続けています。今年度は過去最高の配当を達成する予定です。
東レの配当権利確定日は「3月末と9月末」です。
つまり、口座に配当金が入金されるのは、権利確定日から6ヶ月後の「6月末と12月末」となります。
配当性向は約30%程度
配当性向は、1株当たりの利益のうちどれだけの割合を配当金に当てたかを示す指標です。
配当性向は、以下の数式で求められます。
当期純利益÷配当金総額
EPS(1株当たり純利益)÷1株当たり配当金
東レは、当期純利益の30%を配当金として株主に分配しています。
配当性向30%は標準的な数値だと言えます。
この数年間、配当性向は上昇し続けていました。
その理由は、当期純利益が2018から下落し続けているにもかかわらず、増配を続けているからです。
ところが、配当性向30%は決して高すぎる数値ではなく、むしろ日本の大企業ではよく目にする数値です。
過剰な株主還元をしているわけではないでしょう。
まとめ
東レの魅力は、配当利回り3%超えの高配当銘柄ですが、業績は決して好調とは言えない状態です。
化学素材メーカーは、全体的に厳しい状況が続くと考えられます。
中国や景気後退による化学素材の需要減が響いてきています。
また、航空機(ボーイング787)の減産により、東レの看板といえる炭素繊維事業にも悪影響が及ぶ可能性があります。
株価は下がってきており、割安と呼ばれる水準ですが、様子見をした方が良いかもしれません。
新型コロナウイルスの影響や景気減速観測によりかなり株価が下落しています。
配当に関しては、増配を続けています。
業績が低迷すれば減配の可能性も出てきます。
東レは、現在、割安高配当銘柄と言えますが、今後の業績の先行きが不透明であることから、積極的に買いと言い難い状態です。
ICタグの新技術を開発するなどバットニュースばかりではありませんが、今は様子見が良いかもしれません。