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【原油先物マイナス】日本株への影響は!?なぜ下落し続けるのか?【逆オイルショック】

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今週、ショッキングなニュースが世界を席巻しました。

原油先物価格がついにマイナスとなったのです。

今回は、原油先物価格のマイナスの要因と今後の影響、日本株がどうなるかについて、詳しくご紹介していきたいと思います。

 

史上初!原油先物価格がマイナスに!

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4月20日のWTI原油先物(期近・5月限)は、売りが売りを呼ぶ暴落で、1日で55.9ドル(1バレル当たり)も下がり、マイナス37.6ドルで引けました。

先物価格がマイナスで引けるのは史上初です。

マイナスということは、売り手がお金を払ってでも原油をもらってほしいという状態です。

水よりも原油が安いという異常事態です。

21日はマイナス幅を縮めましたが、マイナス圏での推移が続きました。

 

なぜマイナスとなったのか?

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今回、先物価格でマイナスをつけたのは、WTI石油先物です。

WTI石油先物は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されているWTI(West Texas Intermediate)というアメリカの代表的な原油の先物商品のことです。

WTIとは、西テキサス地方の中質原油という意味です。

この西テキサス地方の原油は含有硫黄分が少なく軽質で、ガソリンや軽油が多く採れるといった特徴があります。

WTI石油先物は、取引量と市場参加者が多いことから、原油価格の代表的な指標のひとつに数えられています。

ここで取引されている原油は、オクラホマ州クッシングの貯蔵施設に貯蔵されています。

ここの原油受け渡し場所の貯蔵施設が間もなく満杯になると予想される中、買い手がほぼ完全にいなくなったのです。

オクラホマ州クッシングの原油貯蔵施設はあと数週間で満杯になると予想されており、5月中に納入しなければならない5月物の買い手はいなくなりました。

過去に類を見ない原油の供給過剰が、史上初のマイナス価格につながりました。

アメリカでは、保管場所が無くなり、行き場のない原油の投げ売りが起こっています。

 

なぜ原油が下落し続けているのか?

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原油価格の下落の発端は、言わずもがな新型コロナウィルスによる原油需要の低迷です。

世界中で移動が制限され、ガソリンの需要も大きく減少しました。

原油の需要が大きく落ち込んでいることから、供給過剰への警戒感が一段と強まっていて、原油価格の下落につながっています。

時系列的に原油価格の減少を追っていきます。

新型コロナウィルスの感染拡大により、世界景気が急激に悪化しました。

原油需要が減少する中、2020年3月6日、OPEC(石油輸出国機構)・非OPEC共同の原油減産に向けた話し合いがなされました。

しかし、減産とはならず、話し合いは決裂したことを受けて、原油価格は急落しました。

この2019年から原油価格の下落に歯止めをかけるため、サウジアラビアは減産していました。そうしている間に、アメリカのシェールオイルの増産が続いていました。

その間に、2019年にはアメリカがサウジアラビアを抜き、世界最大の産油国となっていました。

これに堪忍袋の尾が切れたサウジアラビアは、今回は原油価格を急落させることで、米シェールオイルを潰しにかかりました。

サウジアラビアはこれまで、OPEC・ロシアの協調減産で中心的役割を果たしてきました。

減産に向けた協議がまとまらなかったこともあり、4月1日よりサウジアラビアは2割以上の増産を行いました。

そこで、原油はさらに急落しました。

実際、原油急落で生産が継続できず、破綻したシェールオイル業者も出始めています。

サウジアラビアvsアメリカの原油戦争が行われています。

ところが、2020年4月13日、OPEC(石油輸出国機構)と非OPECで5~6月に世界供給の1割に当たる日量970万バレルの減産を行う合意が成立しています。

しかし、原油の世界需要は、新型コロナウィルスの影響で、日量2,000~3,000万バレルも減っていたのです。

需要減の量と釣り合わない減産発表が、原油先物価格の下落に拍車をかける形となりました。

そうして、WTI原油先物(期近)は、一気にマイナスにまで下がりました。

 

今後の日本株への影響は?

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こうした状況は、「逆原油ショック」と言われています。

この逆原油ショック、記憶に新しいのが、2016年1~3月です。

この頃、原油価格が1バレル100ドル超から50ドル以下まで一気に急落しました。

この時、世界的な景気悪化となり、株価も下落しています。

日本の総合商社の多くは赤字となっており、株価も大きく下げました。

原油急落直後の2016年の日本に起こった影響をご紹介します。

 

①総合商社や資源開発会社に減損発生

商社や資源開発会社などは、資源国への出資や融資を通じて、石油や天然ガス、石炭、鉄鉱石、銅、ニッケルなどの開発事業に参加し、その関与割合などに応じて、産出された資源を引き取ったり、配当金を受け取ったりする権利を持っています。

これを資源権益といいます。

2016年は、海外に資源権益を有する総合商社や資源開発会社などに巨額の減損損失が発生したのです。

三菱商事、三井物産などは2016年に赤字転落となっています。

総合商社などの銘柄は危ないでしょう。

 

②中東産油国の日本株売り

原油収入の減少により、中東産油国による日本株売りが行われれ、日経平均株価が下落する可能性があります。

2016年では、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなど、巨額の政府系ファンドを運用する産油国が、原油安によって国の財政収支が悪化により、保有株式の大量売却に動きました。

そこで、日本株の売却が増え、日経平均株価が下げました。

今回の原油急落でも、2016年と同様の悪影響が日本に及ぶ可能性があります。

 

今後の世界経済はどうなる!?

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景気の影響は、日本だけではありません。

アメリカの景気も原油急落で大きなダメージを受けることになります。

米国は2019年に世界最大の産油国となりました。

原油急落によって、シェールオイル産業で破綻が出ています。

これ以上、原油価格が下落するようだと、さらに破綻が増加する可能性があります。

アメリカは、シェールオイル産業に巨額の資金を投じています。

そうなると、米国の経済にも大打撃となるでしょう。

原油価格の低迷が長期化すれば、アメリカだけでなく、世界各国の財政や経済がさらに大きな打撃を受け、社会不安が広がるなどの深刻な影響が懸念されます。