前回の記事でiDeco(イデコ)について、概要とメリット・デメリット等をご紹介させていただきました。
今回は、その具体的な手続きについてご紹介していきたいと思います。
内容としては、加入の手続きのやり方、途中で職業が変わった場合に必要な手続きといった加入するにあたり重要になってくる事項です。
今回は、転職した場合の3つのケースの対応についてお話していきたいと思います。
- 年金資金を移すってどういうこと?
- 金融機関は選びなおすことができる!
- 転職・退職時のiDecoの手続きは?
- 1. 民間企業に転職したとき
- 2. 公務員・専業主婦(主夫)になるとき
- 3. 自営業・フリーランスに変わる場合
- iDecoは積み立て運用するべし!
年金資金を移すってどういうこと?
iDeCo(イデコ)に限らず、確定拠出年金の大きな特徴の一つが、年金資産を持ち運びできるということです。
職業が変わった時にでも積み立てや運用が続けられるというのが企業型、個人型を問わず確定拠出年金の大きなメリットだと言えます。
つまり、会社や職業が変わってもiDecoを続けていくことができるということです。
従来の制度では、会社を転職したり職業を変えた場合、一定の勤続年数に達していなかったら、会社員を辞めた時点で清算して現金として支給されるか、あるいはまったく支給されないかのどちらかでした。
つまり、転職するとまた新たにその会社の制度に加入するという方法しかなかったのです。
現在の企業年金やiDeCo等の確定拠出年金の場合は、転職しても新しい会社の企業型確定拠出年金へ資産を持っていくことができるのです。
仮に新しい会社に企業型確定拠出年金がなかった場合でも、iDeCo(=個人型確定拠出年金)にお金を移すことで、これまでの掛け金を無駄にせず確定拠出年金を継続させることができます。
このように確定拠出年金の特徴として、企業型同士、あるいは企業型と個人型の間で資産を移すことができる仕組みがあります。
金融機関は選びなおすことができる!
運営管理手数料や商品ラインナップは、金融機関ごとで異なります。
それまで企業型に入っていた人が退職して個人型に移す場合は、それまでと同じ金融機関である必要はありません。
転職を機に、もっと良さそうな商品を取り扱っている金融機関が見つかればそちらに移した方がいいでしょう。
転職・退職時のiDecoの手続きは?
では具体的にどんなパターンがあるのでしょうか?
確定拠出年金には「企業型」と「個人型(iDeCo)」があります。
さらに職業によって、①民間企業、②公務員、③自営業・無職、④専業主婦(夫)ごとで違いがることからパターン化して説明していきます。
企業型と個人型の違いは、前回の記事で触れていますので、気になる方は併せてご覧ください。
ここからは転職あるいは職業が変わる場合、どのような手続きを踏まなければならないのかをケース別にご紹介していきます。
1. 民間企業に転職したとき
まずは民間企業に転職した場合について解説します。
現在の職業が会社員であれ、自営業であれ、勤め先が変わる場合の転職先が民間企業であるケースです。
この場合は、2パターンに分かれます。
転職先に企業型確定拠出年金が①「ない場合」と②「ある場合」です。
①企業型確定拠出年金がない会社に転職した場合
①-1. 今までiDeCo(イデコ)に入っていた場合
企業に確定拠出年金がありませんから、従来入っているiDeCo(イデコ)をそのまま続けることになります。
ただし、これまで継続するには手続きがいくつか必要です。
証券会社のコールセンターに電話して勤務先が変わることを伝えると必要書類を送ってくれます。
すると、「事業主の証明書」、「加入者掛金額変更届」、「被保険者種別変更届」が手元に届きます。
まず全員に届くのが「事業主の証明書」という勤務先で書いてもらう書類です。
「加入者掛金額変更届」「被保険者種別変更届」が送られますので、これらも合わせて提出してください。
さらに、勤務先だけでなくご自身の住所も変わる場合には、「加入者等氏名・住所変更届」の提出が必要です。
コールセンターで住所変更した旨を伝え、「加入者等氏名・住所変更届」を書類をもらう必要があります。
住所変更を行なっていないと、「小規模企業共済等掛金払込証明書」など税の還付に大事な書類が届かなくなってしまいます。
①-2.今まで企業型に加入していた場合
今まで企業型確定拠出年金に加入していた方が企業年金のない会社に転職した場合、必ずiDeCoに入らなければなりません。
なぜなら確定拠出年金は60歳まで引き出せない制度であり、企業型が無い企業に転職しても途中で現金にして引き出すことはできないからです。
つまり、転職した先に企業型確定拠出年金がなければ、iDeCoに入り今までに貯まっている年金資産を移すしかありません。
ただし、毎月の積み立てを続けるかどうかは任意です。
ここで注意していただきたいことがあります。退職後6ヶ月以内に手続きをおこなう必要がある点です。
金融機関でiDeCoの口座を開設してください。
② 転職先に企業型確定拠出年金がある場合
次に企業型確定拠出年金が導入されおり、社員全員が加入することになっている会社へ転職した場合です。
この場合、原則として企業型確定拠出年金に加入するのとになります。
つまり、既にiDeCo(イデコ)や企業型確定拠出年金の資産がある場合は、就職先の企業型確定拠出年金に資金を移す必要があります。
ここで、iDeCoは企業型確定拠出年金がある会社に勤めていても加入できるはずなのに、なぜiDeCoのままで継続できないのか、転職先の企業型に移さなければならないかという疑問を持たれた方がいらっしゃるかと思います。
おっしゃる通りです。
実を言うと、これは法律上はできないことはありません。
ところが実際に企業型が存在する会社に勤めながらiDeCoに加入できる会社はほとんどないのです。
以下でその理由を説明していきます。
確定拠出年金では毎月の積立限度額が決まっています。
仮に確定拠出年金以外に企業年金がない場合、企業型の毎月の積立上限金額は5万5,000円となります。
一方、このタイプの会社の従業員がiDeCoに加入する場合の積立限度額は月1万2,000円または月2万円です。
ところが、両方の積立額を比較して多い方の上限を超えることがないようにしなければなりません。
つまり、月5万5,000円を超えてはならないのです。
iDeCoの同時に加入を実現しようとすると、iDeCoの枠として2万円を確保し、企業型の上限を3万5,000円に減らす変更を会社として行う必要が出てきます。
企業型確定拠出年金は、会社が掛け金を出すわけですから、この場合だと会社の出すお金が減ることになります。会社にとっては嬉しいことですが、従業員は負担が増加します。
iDeCoをするつもりがない人にとってこれは不利益変更になるわけです。
そのため、現実的に考えてこのようなケースを労使間で合意することはないでしょう。
こうしたことから、iDeCoで積み立てたお金は企業型確定拠出年金へ移す必要があるのです。
2. 公務員・専業主婦(主夫)になるとき
自営業だった人や民間企業に勤務していた人が公務員に転職する場合、あるいはそれまでの仕事を辞めて専業主婦(夫)になる場合についてご紹介します。
この場合、iDeCo(イデコ)を利用するという選択肢一択です。
ケース別に見ていきます。
①iDeCo(イデコ)に入っていた方
自営業やフリーランスの方、及び企業年金制度のない会社に勤めていた人、公務員でiDeCo(イデコ)を利用していた方は、そのまま継続することになります。
ところが、それまでとは別の金融機関を選ぶこともできます。
そして、職業・立場が変わることになりますから民間企業への転職同様、「被保険者種別変更届」を金融機関に提出して、公務員ならば月額1万2,000円、専業主婦(夫)ならば2万3,000円までの掛金額に変更をする必要があります。
さらに、ご自身の住所が変わる場合には、「加入者等氏名・住所変更届」の提出が必要です。
コールセンターで住所変更した旨を伝え、「加入者等氏名・住所変更届」を書類をもらう必要があります。
住所変更を行なっていないと、「小規模企業共済等掛金払込証明書」など税の還付に大事な書類が届かなくなってしまいます。
②企業型に加入していた方
民間企業に勤めていて企業型に加入していた人が転職して公務員になったり、その会社を辞めて専業主婦(夫)になったりした場合は、必ずiDeCoの口座を作り、企業型で積み立てた資産を移さなければなりません。
必ずiDeCoに入らなければなりません。
なぜなら確定拠出年金は60歳まで引き出せない制度であり、途中で現金にして引き出すことはできないからです。
つまり、iDeCoに入り企業型確定拠出年金に今までに貯まっている年金資産を移すしかありません。
企業型に加入できなくなった立場の人はiDeCoの口座を作ってそちらに移さなければならないからです。
この場合も、従来企業型で加入していた金融機関と必ずしも同じところへ移さなければならないということはありません。
資産は必ず移さなければなりませんが、その後、毎月積み立てを継続するかどうかは任意です。
3. 自営業・フリーランスに変わる場合
最後に年金持ち運びの方法として、自営業やフリーランスになる場合です。
今まで民間企業や公務員、及び専業主婦(夫)という立場だった人が、独立して自営業等になるというケースです。
この場合、公務員や専業主婦(夫)同様、再び企業勤めをしない限り企業年金には関係ないのでiDeCo(イデコ)の利用一択です。
①もともとiDeCo(イデコ)に入っていた方も②今までは企業型に加入していた方も手続のやり方は前回「公務員・専業主婦(主夫)になるとき」でお話した方法と全く同じです。
積み立てを続けるか、あるいは年金資産の運用だけを続けるかは任意です。
個人的には、iDecoで積み立てをおすすめします!
積み立てをしないと、掛け金が全額所得控除になるというメリットは受けられない上、口座管理料だけがかかり続けることになるからです。
iDecoは積み立て運用するべし!
2016年の12月までの個人型確定拠出年金は、公務員や専業主婦(夫)について新たな積み立てをおこなうことが認められていませんでした。
したがって企業型から移した資産をそのまま持ち続けるだけの運用しかできなかったのです。
このため、民間企業から公務員や専業主婦(夫)になった場合、年金資産はあまり増えないにもかかわらず、口座管理料だけはかかっていました。
そのため、年金資産が減っていくというケースもあったわけです。
ところが現在は、単にiDeCoの口座を開設するだけではなく、積み立てができるようになりました。
つまり、掛け金の所得控除という税制優遇策のメリットを受けながら、なおかつ年金資産も増やせるようになるという優良な制度になったわけです。